2011年6月記事一覧
No.146 葛の山 (行く手を阻むもの5)
岸本 真弓 樹林を伐採したあと、植林せずに放置しているのか、あるいは植林したがこうなってしまったのか、クズがあたり一面を覆っている斜面に出てしまうことがある。 クズは、成長が早く繁殖力が旺盛である。スルスルとほふく前進し、根や茎を次々と派生させ、立ちはだかるものがあればよじ登りまきついていく。その結果、地表面だけでなく、他の植物にもからみつき、大きな葉を広げて覆いきり、樹木の成長さえも阻害する。 写真は福井県。草本類や低木などを軸に私の背丈ほどの3次元のクズが延々と。いったいどこまで続くのか、どうなっていくの…
No.145 蛇と蛙、弱肉強食?
姜 兆文 ある日、富士山北麓で発信機を装着させたシカを追跡するため、狭い林道を車で走行していた。すると、林道の途中に倒木があり、先に進むことが出来なくなってしまった。車から降りると写真に示したように蛇(ヤマカガシ)がカエル(ヒキガエル)を呑み込む光景に遭遇した。瞬間的にカエルを助けようと思ったが、落ち着いてみていると、カエルは一生懸命蛇の口から逃げようとしている。また、蛇も生きるために必死に食物(カエル)を確保していた。これは皆さんがテレビ番組でよく見る、アフリカサバンナの草原に生息するライオンとトムソンガゼルと…
No.144 ヒサカキの花の香り
岸本 真弓 花粉に対抗する体内の薬がわずかに優勢となると、あの香りが鼻を通ってくる。 春、新入社員の初めての山歩きとなる京都シカ調査。したり顔で「近くにシカの死体があるよ」と解説したものだが、2年前に気づいたその正体はヒサカキの花。トンコツラーメンの臭いという人もいて、当時シカの死体臭には賛同が得られなかったが、強力な賛同者を見つけた。なんと麻布大の高槻成紀先生だ。高著『シカの生態誌』にある。 ただ、実際に死体があるときもあるのだ。 20110613_hisakaki.jpg
No.143 イノシシの寝床 -1年後の姿-
山元 得江 イノシシの痕跡の中で、ササで作られた寝跡があった場所は記憶に残りやすい。そのため、これまでに調査したことのある場所だと「前回このあたりにあった寝跡はどうなっているだろう」と思いながら調査することも多い。 写真1は、2010年4月21日に調査した時に撮ったもので、イノシシがササで作ったベッドである。大きさは1×2.5mくらい、厚みは30~40cmほど。ササの緑色が退色しかけているが、寝た跡(中央の窪地)が残っているため、さほど古くないと思われる。写真2は、2011年4月20日に同じ寝跡を撮ったもので、写…