WMO.club

Field Note 公開記事

No.160 捕獲により群れサイズが減少したニホンザル群の行動圏利用の変化

2023年10月発行

捕獲により群れサイズが減少したニホンザル群の行動圏利用の変化   海老原 寛、藏元 武藏(WMO)   私が学生だった頃から、もう10年以上経ってしまった。現在はWMOの一員として、野生動物問題の解決に向けて奔走しているわけだが、今も学生時代に抱いた思いは変わらない。自然が好きで生き物のことを知りたい一方、被害にあわれている方も無視できないなぁと考えている私は、これら両方に貢献できる仕事をしたいと常に思っている。そんな私にとって、野生動物管理の現場はこれらが両立できる場所である。今回は、サルの大…

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No.159 WMOクマ対応のあゆみを訪ねて

2023年07月発行

WMOクマ対応のあゆみを訪ねて   久門 美月(WMO)   1.はじめに ある日、私はWMOのクマ対応の技術開発の経緯を調べて総会で発表しないかと声をかけられた。クマ対応とは、主に錯誤捕獲されたクマを麻酔で不動化し、放獣する業務のことである。(ちなみに総会とは、年に一度WMOの本社、関西支社、広島事業所の社員が一堂に会して、野生動物保護管理について話し合う集会のことである。)クマ対応の仕事が好きな私は、興味深いテーマだと思ったため、発表を引き受ける事にした。クマ対応がいつ、どのように業務として…

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No.158 代表退任のご挨拶

2023年04月発行

代表退任のご挨拶   (株)野生動物保護管理事務所 濱﨑 伸一郎 記録的な早さでかけ上がった桜前線はすでに北海道に至り、すっかり新緑の季節となりました。3年あまり続いたコロナ禍もようやく落ち着きを見せ始め、皆さまもすがすがしい季節に、開放感を感じる日々を過ごされていることと思います。 さて、私は、会社規定の定年により、この4月末をもちましてWMO代表職を退任いたしました。在任中は本当に多くの皆さまからご支援、ご厚情を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。 2015年に羽澄俊裕前代表から当職を引き継いで8年…

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No.157 福島県被災地での営農再開と鳥獣被害対策を考える

2023年01月発行

福島県被災地での営農再開と鳥獣被害対策を考える 鉄谷 龍之(WMO)   はじめに 東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の事故は、10年以上たった今でも被災地において、あらゆる面で影響を出している。その中で最も影響の大きかったものの一つとして、農業が上げられると思う。放射線、風評被害、未帰還による人手不足、分布を広げたイノシシ等による被害等、あげればもっとあると思う。以前、行政と住民の農業再開に向けた意見交換会に出席させていただいたことがあり、農家の方から「除染のため、農地の土を取り除き、山砂を入…

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No.156 市街地に出没するハナレザル問題と対応方法について再確認する

2022年10月発行

市街地に出没するハナレザル問題と対応方法について再確認する   藏元 武藏(WMO)   1.はじめに 近年、ニホンザルのハナレザルが市街地に頻発し、農作物被害、生活環境被害に加え、人身被害が発生し重大な社会問題となっている。これまでWMOが受託したハナレザル対応の事例、行政担当者から相談を受けた事例、性年齢別に見たハナレザルの行動や被害状況、適切な対応方法については、WMOホームページにある「WMO.club」➢「Field Note 公開記事」➢「No.134 市街地に出没するニホンザルの現…

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No.155 新米獣医師奮闘記 ~野生動物を診る~

2022年07月発行

新米獣医師奮闘記 ~野生動物を診る~   箕浦 千咲(WMO)   職業として、野生動物の生体に触れ、治療や安楽殺に従事する獣医師は非常に少ない。「野生動物獣医」というと動物園の獣医師が思い浮かぶかもしれないが、野生動物とは「原野など人の手の入らない領域に生息している・人間に養われていない・人間社会の存在に依存していない動物全般」を指すとされ、厳密に言うと動物園の動物は、人間に養われている「展示動物」である。 「絶滅危惧種を助けるような仕事がしたい」と漠然と思い続けていた私は、6年制の獣医学科を…

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No154 故郷から知床に思いを馳せて ~FIELD NOTEでWMO人生を振り返る~

2022年04月発行

故郷から知床に思いを馳せて ~FIELD NOTEでWMO人生を振り返る~   岸本 真弓(WMO)   このタイトルで私の文章が始まることに「!」とされた方は、かなりの前からのWMOclub員の方ですね。ありがとうございます。1989年10月発行のNo.24に私が書いたのが「知床から故郷に思いを馳せて」であり、これが私の初投稿でした。ちょうど130号分の時代を経たのがこの154号になります。 私は今年の1月に還暦を迎え、WMO役員規定に従って、4月末で定年退職します。そして5月以降は働き方を変…

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No.153 ライフワークになりつつある羽収集

2022年01月発行

ライフワークになりつつある羽収集   研究員A・M(WMO)   新年あけましておめでとうございます。 2022年は虎年だということで、あちこちで虎の絵が目に入りますね。では皆さん。虎は虎でも、このトラ、何トラか分かりますか?     正解はトラツグミの羽です。翼の白いパッチと部分的に明るい茶色い模様と、先端が濃い茶色の羽毛が特徴的です。 トラツグミといえば「トラツグミのダンス」といって、落ち葉等の下にいる虫を探す時に体を上下に動かす姿が有名ですが、初めて私がトラツグミに出会…

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No.152 サラリーマン田舎暮らし~春夏編~

2021年10月発行

サラリーマン田舎暮らし~春夏編~   稲葉 史晃(WMO)   ~はじめに~ 田舎暮らしというのか、山暮らしと言うのかよく分からないが、とりあえず私は街から離れた場所で暮らしている。国道までは比較的近いのだが、山の斜面を削って開発された別荘地の中に家があり、地デジも受信出来なければ、トイレも簡易水洗、周囲の家は井戸水で生活している様である。引っ越して2年間で、動物を轢いて車を壊す・ムカデに刺される・家の中にアリの巣が出来る・水道凍結により風呂に入れない・畑が獣に食い荒らされる等・・挙げるときりが…

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No.151 「屋根裏の散歩者?」ご近所獣害対策

2021年07月発行

「屋根裏の散歩者?」ご近所獣害対策 海田 明裕(WMO)   最近、4年ほど住んだ新興住宅地から、やや郊外にある田園地帯の古民家へ引っ越しました。どちらも会社のある神戸市北区内ですが風景は全く違います。新居はほんとに神戸市かい?というようなのどかさです。近所は田んぼと畑と放置気味の雑木林、民家はポツポツ、空き家もたまにあるけれど、まだまだそんなに多くはない。水田中心の典型的な里山風景です。 元々10年近く空き家だったところに幼い子どものいる一家が引っ越してきた、ということで地元の広報誌の方が取材に来られま…

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No.150 機械仕掛けのフィールドワークの雑感

2021年04月発行

機械仕掛けのフィールドワークの雑感   林 航平(WMO)   雑感 最近、フィールドワークに出るとスマートフォン一台であれやこれやと何でもしてしまう。仲間との連絡にはLINEのチャットで、位置の確認やトラッキングには地図・コンパスアプリで、データはその場でスプレッドシートに入力する。約10年前、私がフィールドワークを始めたころに持っていた道具を思い出してみる。ガラケー、ハンディGPS、デジカメ、野帳、方位磁石など色々な道具を持ち歩いていた。今も大きくは変わらないが、極端なことを言ってしまえば、…

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No.149 福島県避難指示解除区域に暮らして

2021年01月発行

福島県避難指示解除区域に暮らして   鉄谷 龍之(WMO)   私が避難地域鳥獣対策支援員(以下、支援員)になり、福島県双葉郡富岡町で暮らし始めたのは、2019年4月である。東日本大震災および福島第一原子力発電所事故(2011年3月11日)の約8年後、富岡町の一部地域を除く避難指示が解除(2017年4月1日)された約2年後である(図1,2)。そのころには、あまり震災関係のニュースは報道されなくなっていたように思う。支援員になる直前は、仕事の主軸が鳥獣関係から少し離れていたが、「避難12市町村にお…

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No.148 田舎暮らし体験記 ~前編:野生動物との戦い~

2020年10月発行

田舎暮らし体験記 ~前編:野生動物との戦い~   加藤 洋(WMO)   1.田舎暮らしという概念の誕生と変遷 「田舎暮らし」という言葉が定着するようになって、もう数十年になるという。高度経済成長以降の日本では、都市部への人口流出が進んだ。しかし、人々は都市での生活に疲弊したのか、1980年代前半より「脱都会生活」「田舎暮らし」という言葉が生まれ、田舎暮らしへの憧れが高まったという。1980年代後半から1990年代前半には、バブル経済期を背景に、田舎暮らしがリゾートとしての投資対象となり、農村部…

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No.147 日本百名山と私とシカ

2020年07月発行

日本百名山と私とシカ   関 香菜子(WMO)   日本百名山、テレビでも目にする機会が多くその存在は一般的なものかと思います。登頂ツアーも沢山組まれていて、「全部登頂済み!!」「全部言える!!」という人は意外と多いかもしれませんね。 幼少のころから山に親しんでいた私ですが、25歳の時、ふと「そうだ。日本百名山全て登ろう!!・・・60歳までに。」と言い出しました。その時点で、100座のうち富士山・筑波山しか登っていなかったのですが・・・。ただ、日本百名山の最年少登頂記録は6歳という記事もあります…

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No.146 樹皮剥ぎはシカの「食文化」になっている

2020年04月発行

樹皮剥ぎはシカの「食文化」になっている   姜 兆文(WMO)   「文化」と言えば人によってはある有名人の言葉が思い出されるかもしれないが、ここでは野生動物であるシカの「食文化」として紹介したい。1980年代以降、日本各地でニホンジカ(Cervus nippon、以下、シカという)が爆発的に増加し、農林業被害や生態系に対する悪影響が深刻となっている。 シカの個体数増加に伴う過度の採食圧により、ササの退化、下層植生(草本と低木層)の消失(裸地化)、土壌や落葉の流出が起こり、自然植生への影響が問題…

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No.145 「神道と動物」

2020年01月発行

  「神道と動物」 野瀬 遵(WMO)   1.はじめに 2020年がスタートしました。みなさんは初詣には行かれましたか?行かれた方々はどんな神社にお参りしましたか? 神社にいる(ある?)動物と言えば狛犬ですよね。一対の獅子形の像で「阿吽」や「雌雄」を表し、神前守護のためにおかれています。そんな狛犬ですが、起源はエジプトやインドにあるとされ、朝鮮半島経由で飛鳥時代に日本へ移入したものです。多くの神社に設置されるようになったのは江戸時代頃からと言われており、古代の神社にはありませんでした。そのため…

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No.144 サル、ムササビ、そしてドローン

2019年10月発行

サル、ムササビ、そしてドローン 岡野 美佐夫(WMO) ムササビとサル サルに発信器を装着しようと群れを追跡し、捕獲チャンスを狙っていた時の話である。 林の中でゴッゴッというサルの威嚇の声があがり、ほかの個体もそれに追随して威嚇しながら何かを追いかけるような騒ぎが起こった。また群れの中で喧嘩が起こったのだろうと様子をうかがっていると、いつもと様子が違う。悲鳴をあげて逃げ回るサルはおらず、聞こえるのは興奮して威嚇するサルの声だけである。 これはサルではなく、別の生き物が追われているのかと林内をうかがうと、何かを追いか…

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No.143 野生動物と家畜の間で広がる感染症

2019年07月発行

野生動物と家畜の間で広がる感染症 近藤 竜明(WMO)   【はじめに】 2018年9月に衝撃的なニュースが飛び込んできた。私の故郷、岐阜県岐阜市の養豚場で「豚コレラ」が発生したのである。「これは大変なことになるな」と直感した覚えがあるが、この後にイノシシの感染個体が次々と確認され、県の畜産施設でも感染個体が出るなど、ここまで大きな事態になるとは予想もしていなかった。以降、お隣の愛知県でもイノシシや養豚場でも発生が確認され、養豚場の豚が殺処分となるケースが相次いでいる。本稿を執筆中にも三重県そして福井県で…

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No.142 石川県加賀市に生息するカモシカ――行動圏と老齢個体の動き――

2019年04月発行

石川県加賀市に生息するカモシカ――行動圏と老齢個体の動き――   山元 得江(WMO)   【はじめに】 石川県南部の加賀地域では、ニホンカモシカ(以下「カモシカ」という)以外の調査でカモシカを目撃する機会が多かった。また、白山山麓に設定されている白山カモシカ保護地域は、全国のカモシカ保護地域の中でもカモシカ密度が最も高い地域の一つである。一方で、同地域にはニホンジカ(以下「シカ」という)が侵入して分布域が拡大すると共に生息数が増加している状況にある。この地域に生息するカモシカ3頭にGPS首輪を…

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No.141 尾瀬だより ~生物編~

2019年04月発行

尾瀬だより ~生物編~ 後藤 拓弥(WMO) 前回の歴史編に引き続き、今回は尾瀬に住む生物にスポットライトを当てます。尾瀬国立公園内および周辺域(南会津町含む)では多種多様な生物を観察することができます。ほんの一部ではありますが、私が確認できた観察種をいくつかご紹介します。 ■哺乳類編 哺乳類はニホンジカ、ニホンカモシカ、ツキノワグマといった大型獣からニホンザル、キツネ、タヌキ、テン、ヤマネ、オコジョ等々、小中型哺乳類まで多様な種が観察されます。尾瀬に生息するニホンジカは、これまでの環境省のGPS首輪による調査結果…

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