研究員によるフォトブログ

No.249 ピットフォールトラップ

2016年07月09日

岸本 真弓  ずっと若かった頃、ピットフォールトラップでタヌキの食物となる地上徘徊性甲虫層の調査をしたことがある。  ある年の冬、シカの調査で近畿地方の山を歩いていると、足下に糞虫の死体らしき個体が多数ころがっていた(写真1)。どうしたのだろうとしばらく写真など撮っていたが、ふと前方に目をやると、目の前にあるものと同じものがある。そう、倒れたプラスチック杭だ。そちらの杭の周りにも多数の糞虫の死体(?)がある(写真2)。ふと地面に残る杭の中をのぞく。中にあるものを溜まった水の中から掻き出す。測ってみたら深さが44cm…

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No.248 小さな力が集まれば

2016年07月02日

海老原 寛 テントウムシは小物のデザインなどにもよく用いられ、かわいい印象があるのではないだろうか。しかし、私はテントウムシに襲われたことがある。ある年の10月、サルのテレメトリ調査のためにアンテナを振ろうと車から外に出たところ、多数のテントウムシが飛び交い、絶え間なく顔に、体にぶつかってきた。急いでアンテナを振り、車内に逃げた。ふと目の前にあった電柱を見てみると、下から上まで信じられない数のナミテントウが集合していた。その数は1万程度ではないかと思われる。冬眠の準備をしようと集まっていたのだろうか。原因はわからな…

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No.247 毒肉強食

2016年06月19日

岸本 真弓 四国のある県でのこと。調査を終えて集合しようとしていると、仲間がなにやら夢中になっている(写真1)。 近づき、説明を受けながら目をこらし、焦点を合わせるとなんと! 蛇が蛇を食べていた(写真2)。よく見れば食べられている個体はマムシの幼蛇である。一方、上半身(? 地面から直立する前1/20身)をえづかせながら丸飲みしていくのはシマヘビ。 大きさが雲泥の差とは言え、マムシは本州最強の毒蛇。どうして勝てないのか。鼠でも追いつめられたら猫を咬むというのに。上あごとか下顎とか、口に挟まれた絶対絶命状態で舌に噛みつ…

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No.246 負けるもんか

2016年06月14日

海老原 寛 全国でシカが増加し、植生の衰退が生じている。その現象の1つとして植物の矮性化があり、シカの影響評価の指標として用いられている。ある地域で見つけたイヌツゲは矮小化の程度が激しく、本当に小さな葉をつけていた。それだけシカの影響が大きいということが読み取れる。しかしそれは、シカを主役に物事を見てしまうからこその視点に他ならない。このイヌツゲは、どんなに繰り返し食べられてもどんなに矮小化されようとも、懸命に生きている。植物を主役にしてみると、生きる執念のようなものが感じられ、尊敬と共に応援をしたくなるのである。…

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No.245 やりこみ要素

2016年06月10日

宇野 浩史 アンテナや受信機、コンパスを駆使してサル群の位置を特定するロケーションは、まるで宝探しゲームのようだ。アンテナを振って発信音が最も強く聞こえる方向に群れがいるという原理は、割と単純に感じるかもしれない。しかし、地形によって電波の入り方が異なったり、電気柵のような発信器に似た紛らわしい電波があったり、はたまたサルを気にしつつ狭い道を駆け抜ける運転技術が必要だったりと、決して簡単なものではない。 このような中、電波の元である発信器の装着された個体を発見することは、このゲームにおけるちょっとしたやりこみ要素だ…

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No.244 野生動物とのつきあい方

2016年06月06日

岸本 真弓  川沿いの道を車で走っていると、川の中と岸にシカがいた。川岸でのんびり草を食んでいたシカも私たちの車が近づくと面倒臭そうに川底に降り、母子3頭とぼとぼと歩きだした。 いったん車の進行方向を確認し、そろりと車を前に出すと・・・ 母子が振り返った、排尿しながら。。。 なんと緊張感のない姿。いったいどういうつきあいが続くと人間とシカはこのような関係になるのだろうか。  これから30年ほどの間に日本人と日本の野生動物との関係は激変するだろう。今は野生動物を殺し、奥山に閉じ込めようと人間は躍起になっている。しかし…

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No.243 ミイラ!?

2016年06月03日

檀上 理沙 昨年春の糞塊密度調査で出会った不思議なもの。ミイラ化したような動物の死体(写真1)。 ミイラとは人為的加工ないし自然条件によって乾燥され、長期間原型を留めている死体のこと(ウィキペディアから引用)を指すらしいが、この写真の動物は顔全体と四肢の先だけミイラ化しているように見えた。ミイラ化といっても、皮膚が乾燥して黒色化したものが骨の表面に張り付いているといった感じで、腐敗の一過程にすぎないのかもしれないが私は見たことがなかったので驚いた。もし、これがミイラだとしたら、私の頭の中は古代エジプトへ飛んでいって…

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No.242 近くて遠い

2016年05月31日

海老原 寛 ある動物園のバードゲージには、カワウやアオサギなど、日本の鳥が多数放たれていた。ちょうど時期だったようで、多くの鳥が営巣している。ふと見ると、ケージの鉄骨の角でカワウとアオサギが突っつき合いのケンカをしていた。だが、お互いの嘴は相手に届くことはない。なぜなら、2羽の間には金網があるからである。そう、アオサギはケージの外にいるのである。ケージの中にサギが多数飼育されているため、野生のサギ達が安全な場所だと勘違いをし、コロニーを形成してしまったようなのだ。雛が孵り、巣立つまで延々と続くであろうこの不毛な戦い…

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No.241 クスさん

2016年05月17日

宇野 浩史 イノシシ痕跡調査の道中、美しい網目状の繭を見つけた。 調べると、クスサンという蛾のものであるそうだ。クスサンは、漢字で樟蚕と書き、その名の通りクスノキなどを好んで食す、ヤママユガ科の一種だ。幼虫はシラガタロウと呼ばれ、クスノキだけでなくクリやクルミ、トチなどに食害を与える害虫として扱われる一方、誰が思いついたのか、その繭糸腺はテグスとして利用されることもあったそうだ。 「クスサン」、「シラガタロウ」という、害虫にしては何となく愛嬌を感じてしまう名称も、現在の主流であるナイロン製の釣糸がまだ手に入りにくか…

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No.240 針の穴を通す

2016年05月13日

岸本 真弓 錯誤捕獲されたクマに麻酔をかけ、檻から出して山に返す。移送放獣という。ハコワナの場合普通は吹き矢を使うが、捕獲檻が脆弱で壊されそうというお話なので、少し遠方から麻酔銃で麻酔をかけることになった。1射目、ちょっと失速し手前の何かに当たりクマに到達せず。その後無事命中し、クマはやがて一時的な眠りについた。  動かなくなったことを確認して、近づくと最初の矢がものの見事にハコワナの針金に刺さっているのがわかった。こんなところに当たる確率は、10cm×7cm格子の3mm径ワイヤーメッシュなら、102/7000(約…

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No.239 いにしえ石を発見

2016年05月09日

姜 兆文 丹沢山地でのシカ調査を終了後、川沿いを歩いて山を降りる途中、写真1に示した石を発見した。この石を見た瞬間、農耕時代の石器ではないかと思った。鋭い三角形の先端部および鋭く磨くために残ったはっきりした稜状線、石全体の滑らかな流線形(写真1)と直角の後部(写真2)。どちらの特徴も、昔、農作業で牛や馬に曳かせた、田起こし用の犂の鍬(写真3)の部分だと思われる。皆さんはこれが人間の手で加工されたものだと思うでしょうか。いつか、考古学者に依頼し、鑑定してもらいたい。 写真1.鋭い先端部と直角な後部 写真2.磨くため残…

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No.238 心霊写真の正体

2016年05月02日

檀上 理沙 サルの性年齢識別研修のため、ある野猿公苑を訪れた時のこと。 突然、サルの横から生首がこちらを見ていた(写真1)。 正体→サル用の餌を求めて現れたシカ(写真2)。 20160502_shinrei3.jpg

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No.237 甘い椿

2016年04月28日

岸本 真弓  椿の花は甘い。花が大きいので蜜もたっぷりだ(写真1)。 冬の間地味な色合いの林を彩ってくれる椿の花も春になると、ポトリと落ちる。 その落ち方が首を切り落とされるようだとのことで、武士には忌まれたと中学の時の英語の教科書に載っていたのを思い出す。  そんな花の落ち方の恩恵にあずかっている動物を映像が捉えた(写真2、写真3)。 シカだ。動画で見るとそこいらに落ちている椿の花をパクパク食べている。 シカの食べるもので甘いものはあまりないように思う。年に一度のデザートの季節なのかもしれない。 20160428…

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No.236 天罰でしょうか?

2016年04月25日

姜 兆文 山のアカマツ林内を夢中で糞塊調査していたときのこと。下を向き、歩きながらシカの糞塊を確認していると、誰かが私の頭を一撃した。 「痛い、イタイ!誰だ!?」 落ち着いて周囲を見回すと、まっすぐ横に伸びた腕と、その先には固く握られた“拳”があった。私の頭を殴ったのは木の“拳”だったのだ(写真1)。 木と木の間隔が広く、歩きやすい林内を心地よく調査していたため、突然のパンチは余計にインパクトがあり、不思議にも思った(写真2)。私は何か悪いことをして、天罰を受けたのだろうか。かえりみても、天罰を受けるようなことをし…

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No.235 丹沢

2016年04月22日

三井 夏紀 本社から徒歩2分プラス階段で、遊歩道に出ます。運動不足、ストレス解消に、朝、長い階段を上り、丹沢を眺め、写真に残します。 事務担当で調査に出ない私は、みんなが調査に出る丹沢がどの辺なのか分かりませんが、そのひととき、調査の無事を願います。 WMOには、調査に出る人だけでなく、事務所でみなさんの帰りを待つ人もいます。 20160422_tanzawa.jpg

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No.234 白い花、赤い花。好き? 嫌い?

2016年04月15日

岸本 真弓 関西分室の玄関脇に立つハクモクレンはもう若葉の季節となったが、京都の日本海側の町に行った時、モクレン(紫木蓮)が満開だった。モクレンとハクモクレンは色が違うだけで同じ種類の植物かと思っていたが、違う種だと調べてわかった(モクレン:Magnolia quinquepeta、ハクモクレン:Magnolia heptapeta)。  春のシカ調査で山を歩くと、シカの忌避植物として我が世の春を謳歌するようなアセビが白花をたわわにつけている。よく見ると、スズランのような釣り鐘型の可憐な花である。色は、房すべてが真…

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No.233 冬の山の彩り

2016年01月19日

岸本 真弓 サルを追いかける山の中で、小鳥の姿に癒やされた。 冬、木々は彩りを落として静かに息づいている。 ウソの桃色の喉はあでやかだ。 あでやかさに嫉妬した人が「ウソ」などという名をつけたのではとさえ思うほどだ。 ジョウビタキのお腹は地味な背景には真紅とさえ見える。 そもそも真紅などという色は何から定められたのか。 空は水色というが、水は透明だ。 色をインプットする際に何を植え付けられているのだろう。 20160119_syashin2.png

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No.232 天然盆栽

2015年11月17日

姜 兆文  9月末、尾瀬沼の周辺を散策した時、歩道の遠く前方に、太い枯れた切り株の上を彩る、華やかで盆栽のような色鮮やかな紅葉の藪を見つけた(写真1)。切株の上に古木のひこばえから成長した「老いた株の上の新芽」が、また長年に渡って蓄積されたほこりと落葉などを由来とする土壌で成長した植物だと思った。距離を縮めて見ると、老いた株の上にはびこる根を発見した(写真2)。株の幹に貼り付いている付着根を辿ってみると、つる性の茎は、地面に達していることが分かった(写真3)。そしてついに、この天然の盆栽の正体がダケカンバの切り株に…

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No.231 本人たちが納得しているならば

2015年10月13日

海老原 寛 アカメガシワは、明るいところになら比較的よく見かける木本である。この植物は、アリを利用して外敵から防衛することで有名である。葉の付け根などに蜜腺があり、その蜜を提供することでアリを呼ぶ。そのついでに、アリは葉を食べる蝶の幼虫などを捕えていくため、結果的に防衛ができるのである。ところで、アカメガシワは「蜜」というコストを払って「防衛」というメリットを得ているにもかかわらず、アリは「蜜」と「幼虫」というメリットを得ただけで、コストを全く払っていない。これも一種の相利共生なのだろうが、不適切ながら私には「ヒモ…

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No.230 スズメバチとスズバチ

2015年10月05日

岸本真弓  スズメバチは私の天敵だ。前回刺された時にかなりの症状が出たので、次はただではすまないだろう。  そんなスズメバチが糞虫を殺すところを見た(写真1)。シカの糞に数匹の糞虫が集まっていた。写真を撮ろうと近づくと、私より早くスズメバチが糞虫にとびかかり、1匹を捕まえた。スズメバチを恐れる私は3mほどさがった。スズメバチはその場でバリバリと音を立て押さえ込んだ糞虫のどこかを噛み砕いている。周りにいた他の糞虫たちは、慌てるでもないが、そそくさといなくなった。十数秒だろうか、数十秒だろうか、噛み砕きを終えたスズメバ…

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