研究員によるフォトブログ

No.229 暑い夏を乗り切る方法~民家の瓦~

2015年09月30日

檀上 理沙 毎日厳しい暑さが続いていた2014年8月の朝7時ごろ。 早朝の涼しい風がやみ、徐々に日差しが攻撃的になり始めた時間帯に、ニホンザル♂がとった行動(写真1)。 民家の屋根にへばりつき、夜間のうちに冷やされた瓦で自分の身体を冷やしたかったようだ。 林内の木陰で休むことよりも、人目をはばかることなく屋根の上で大の字になることを選んだ彼は、とても気持ちよさそうな顔つきで寝ていた(写真2)。時より、車から観察する私をチラ見するが、ピクリとも動こうとしないという少しふてぶてしい態度。 人馴れが進んだ地域の加害群では…

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No.228 人のこと言えない

2015年09月19日

海老原 寛 糞を探しながら下ばかり見て山を歩いていると、顔にクモの巣が絡まることが多々ある。調査中に私がわずらわしく感じることランキングでは上位に位置している。それにしても、あのタイプのクモはなぜ巣の中心にいるのだろうか。どこに獲物がかかってもすぐに駆けつけることができるメリットはありそうだが、小さなクモならまだしも、ジョロウグモのような大きさであれば獲物に簡単に気付かれそうなものだ。虫の感覚について詳しいことはわからないが、もう少し注意したらどう?と言ってあげたくなる。と言いつつ、私もまた引っかかっているのだが。…

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No.227 石のイノシシを発見!

2015年09月10日

姜 兆文 シカの糞塊調査ルートで、イノシシの掘った跡がよくあった。イノシシの姿も見えるかなぁーと思いながら調査を続けた。突然、調査ルート上、一つの巨石に私の進路が阻まれた。迂回して通って、背後の巨石を見ると、巨石の根元に隠れたイノシシがと思うような石を発見した(写真1)。皆さん、この石はイノシシだと思いますか。私は見た瞬間、特に頭部と前半身(写真2)、イノシシだと思った。巨石の側面から見ると、本来、イノシシは巨石の一部として、巨石から綺麗に分かれて、薄い石の板になった(写真3)。 地質変遷の長い歴史の中で、何らかの…

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No.226 声なき声を聴く

2015年08月24日

岸本真弓 5月、山を歩いていたら何かが頭にポツンと当たり、落ち葉の重なる地面にカサっと落ちた。見ると長さ1cm直径5mmほどの葉っぱの巻き物だ。とても丁寧に巻いてある。  開いてみる。筒の側面の折り込み方など、かなり精巧な仕事だ。巻きをはずし、綺麗に半分に折られた葉を開くと、中にトビウオの卵のような黄色透明な卵がひとつあった。これは?  パソコンで「葉、虫卵、巻物」で検索すると一発で答えがでた。“オトシブミ”だ。名前は聞いたことがあったが、初めて見た。まさに落とし文。中に伝えたいことが書いてありそうだが、いくら開い…

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No.225 ブレーメンのカキもぎ隊

2015年08月18日

檀上 理沙 ※合成ではありません。 サルの群れを追跡していたときの一コマ。 民家脇にあるカキの木を狙うサルたちを記録するためシャッターを切った瞬間、私は叫んだ。『ブレーメンッ♡』 グリム童話の一編「ブレーメンの音楽隊」には、ロバ・イヌ・ネコ・ニワトリが団結して縦に連なり、家の中にいる泥棒たちを脅かしてごちそうを奪いとるシーンがある。 今回は、この偶然撮影できた1枚の写真に私が釘付けになっている合間に、まんまと彼らはカキをゲットし、そそくさと逃げて行った。 (写っていませんが、写真左横にカキの木があります…

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No.224 両立の大変さ

2015年08月10日

海老原 寛 山を歩いていると、伐採地に出た。そこには一面に草本が広がっていたのだが、ほとんどがダンドボロギクであった。ダンドボロギクは外来種であると同時に、シカの不嗜好性植物として知られている。今後、スギやヒノキなどの人工林を広葉樹林に変えていく取り組みがおこなわれていくだろうが、伐採後に芽を出した日本原産の草本はシカに食べられ、代わりに外来の不嗜好性植物が広がる光景が増えていってしまうのか。頭で予想はしていても、実際に目にするととても残念な気持ちになる。 20150810_ryouritsu.jpg

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No.223 山のベンチ

2015年08月04日

岸本真弓  ある山の小さな鞍部を通り過ぎようとしてふと見ると、ハシゴのようなものが見えた(写真1)。近づいてみると、苔生したベンチがあった。鞍部を見通すような位置に設えられたベンチ。旅人の休憩所か、山の精たちの語らい場か。。。  夢を壊してしまうが、種明かしは写真3。山越え旧道の欄干である。下に現在の車道が見える。いつの時代のものか分からないが、現代のガードレールのようなものか。時を経て、土は削られ、緑の絨毯をまとい、鞍部を渡る動物たちの観覧席になったようだ。 20150804_yamanobenchi.jpg

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No.222 異端児はオシャレの最前線?

2015年07月22日

海老原 寛 変わった形の角を持ったシカの頭骨(角付近のみ)を見つけた。シカ角の特徴である枝分かれがないが、かといって1歳の角でもなさそうだ。袋角かとも思ったが、枯角のようである。私はこのような現象の原因に詳しくないが、ホルモンが影響しているということを聞いたことがある。そういえば学生時代、ハンターの巻狩りに同行させてもらった時には、ヘラジカのような平らな角を持ったシカを見た。それは冬であったにも関わらず、完全な枯角ではなかったように記憶している。シカの角はメスへのアピールに貢献していると聞くが、このような角を持った…

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No.221 初冠雪の富士山

2015年06月22日

姜 兆文 10月17日、山梨県での調査中に杓子山から初冠雪の富士山を見ることができた。平野部から雲の端を貫くようにそびえ立つ独立峰の雄大さと美しさを改めで感じた(写真1)。山頂部をカメラから覗くと、うっすらと積もった雪に覆われた頂上、鋭い稜線、さらには蛇行する登山道もはっきり見ることができ(写真2)、大自然がかもしだす美しい傑作に感動した。一方、同じ日、悲しいニュースも耳にした。積雪などの天候の厳しさにより、御嶽山の噴火被害による7名の行方不明者の捜索活動が断腸の思いで、やむを得ず中止された。この噴火被害を機に、噴…

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No.220 ママーーーーー!!!

2015年06月17日

檀上 理沙 2014年7月。母グマがイノシシ用の箱わなに錯誤捕獲され、子グマが周囲にうろついるとの通報が入り、現場へ向かった。現場到着時、母グマはすでに興奮状態で、周囲は緊迫した雰囲気に包まれていた。状況確認のため、箱わなに接近すると近くの薮から『クマーーーーッ』『ンマーーーーッ』と鳴く声が聞こえた。私は、その時初めて子グマの鳴き声を聞いた。(本当にクマ~ッて鳴くんだぁ!)と、心の中はとても舞い上がっていたが、緊迫した状況のあまり素直に喜べない状況だった。その声は1頭ではなく、2頭で鳴き交わしており、どうやら2頭の…

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No.219 愛蛇

2015年06月03日

岸本 真弓 2014年は9月から恒例のシカ糞調査が始まった。例年より1ヶ月早いため、山の空気もずいぶん違う。見とおす先は緑に揺れ、足下には草が立つ。旅立つ前の夏鳥の声が聞こえ、体が暖かな両生爬虫類たちは元気だ。  カナヘビは機敏だ。こちらが気づいた時にはもう姿が見えない。カサカサカシャーッという音が、まるで離れたところに届く花火の音のように、すべてが終わってから脳に届く。ところが、珍しく切り株の先端で動かないカナヘビがいた。最初は遠くから、徐々に間合いをつめて撮影していくが、まるで金縛りにでもあったように動かない。…

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No.218 この紋所が目に入らぬか

2015年05月29日

海老原 寛 カンアオイは山を歩いているときに見かける植物だが、目立たないために気に掛ける人は少ないだろう。それでも、この植物は万人が知っているあるマークに使用されている。それは徳川家の家紋である。厳密に言えば、「フタバアオイ」が元になっているようだ。調べてみると、元々は京都の賀茂神社の神紋にフタバアオイが使われており、それを徳川家のルーツである松平家が使用していたようである。写真のものがそのフタバアオイであるかは、残念ながら私にはわからない(たぶん違うと思われる)。しかし、どちらにせよこのようなあまり「目に入らない…

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No.217 スズメバチとスズバチ

2015年05月19日

岸本真弓  スズメバチは私の天敵だ。前回刺された時にかなりの症状が出たので、次はただではすまないだろう。  そんなスズメバチが糞虫を殺すところを見た(写真1)。シカの糞に数匹の糞虫が集まっていた。写真を撮ろうと近づくと、私より早くスズメバチが糞虫にとびかかり、1匹を捕まえた。スズメバチを恐れる私は3mほどさがった。スズメバチはその場でバリバリと音を立て押さえ込んだ糞虫のどこかを噛み砕いている。周りにいた他の糞虫たちは、慌てるでもないが、そそくさといなくなった。十数秒だろうか、数十秒だろうか、噛み砕きを終えたスズメバ…

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No.216 イノシシ、慣れの果て

2015年05月13日

清野紘典 イノシシは小心者で臆病な動物です。 警戒心が高い動物がゆえに昼間は山林や藪の中に潜み、その姿をなかなか人前には現しません。夜がふけると人目を忍びこっそりと集落や農地に出没します。 被害対策で林の縁の整備が重要なのは、農地までの隠れ処や移動ルートとなるヤブを失くして、イノシシに緊張感を持たせることにあります。 しかし、そんな臆病なイノシシも一度人への警戒心を解くと驚くほど大胆になっていきます。その変化はまさに劇的です。写真は、とある四国の山間地で目前に現れたイノシシ。人を人とも思わぬ堂々ぶりです。 人と野生…

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No.215 やはりツバメの「住宅難」!

2015年04月30日

姜 兆文 毎年5月の愛鳥週間の開始を前に、日本野鳥の会は「ツバメの巣を落とさず、見守ってほしい」と呼び掛ける。本ブログのNo.141で、2010年7月、南アルプスの芦安集落のバスターミナル(写真1)でツバメの家族と出会ったことを記事にした。そこには、親鳥が餌を運んでくると5羽のヒナが並んで大きくクチバシを開いて、幸せそうに受け取る光景があった(写真2)。2011年、巣は無残に撤去されていたことを確認した。その後、毎年バスターミナルを訪ねて、営巣位置を確認しているが、ツバメの巣はなくなっていた(写真3)。ツバメは同じ…

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No.214 尾瀬の春

2015年04月15日

奥村 忠誠  いずれも昨年の4月の写真。上の写真は、4月22日、下の写真はその10日後の4月28日。  10日間で雪解けは一気に進み、見える景色も全く変わる。  尾瀬の代名詞であるミズバショウも咲き始めている。でもよく見ると下の写真の木道上に散らばる枯れ草。これはシカが通った跡。すでにシカは夏の生息場所である尾瀬に移動してきている。もう少ししたら子鹿も生まれる。シカにとって尾瀬は餌が豊富にある大事な場所。人間にとっては?  人は尾瀬の植物とシカの生息にどのような折り合いをつけるのか。みんなが考えなければならない。 …

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No. 213 カモシカの強い縄張り意識の証明?!

2015年02月10日

姜 兆文  1月、車で群馬県内の林道を入って暫く走ると、道路沿いにカモシカ1頭が現れた(写真1)。良いシャッターチャンスだと思って、車を停めた。しかし、いくら写真を撮っても、カモシカは全く移動しなかった。車から降りて、写真を撮りながら接近しても逃げなかった。5、6メートルまで接近すると眼下腺からの分泌物を木に塗って、マーキングをし始めた。2、3メートルまで近づくとカモシカは頭を上下に動かし、鋭い角を見せるように威嚇をし始めた。その後、ドキドキしながら、触れることが出来そうな0.5メートルまで接近した(写真2)。これ…

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No. 212 日本の鳥といえば

2015年01月26日

岸本 真弓 今も一緒に調査に行くTさんと初めて会ったのは1990年、初夏の奈良だった。山を背にあぜ道に座っているとジッジッと低く小さな声がする。「日本人に最もなじみ深い鳥の声だ」と教えてもらった。そう、ウグイスの地鳴きである。  今年の晩夏、奈良の山を歩いた。いつもは盛秋に歩くので、鳥の声もわかる人が聞けば違いは歴然なのだろうなあ、などと思っていたら、ギジギジギジギジギジと聞き慣れない騒ぎ声が迫ってきた。それも群れだ。いったい何なのだと思い、双眼鏡で追うと、ソウシチョウだった。  ソウシチョウを初めて見たのは199…

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No.211 置きたくなる人

2015年01月15日

岸本 真弓 山を歩いていたら、石柱の上にアナグマの頭骨が置いてあった。アナグマの頭骨を見つけて持って帰りたくなる私のような人間でなければ、石柱の上に置くのもわかるな、と思い歩を進めると、今度は倒木の上に石があった。何か不自然だ、そう思いながら進むと、次は切り株の上に明らかに、不自然に、そう石が置いてあった。目線をあげると、なんと、切り株という切り株の上に石がある。 これは、茶目っ気にしては度がすぎる。最初はふざけて置いていたが、だんだん止められなくなったのだろうか。そんなことをやってしまうのは、一見さんである登山者…

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No.210 天然の足跡トラップ

2014年12月12日

星野 莉紗  小川沿いで小さなぬかるみを見つけて足を止めると、まるで爪楊枝よりも細く、可愛らしい痕跡をみつけた。一見、鳥類の足跡のように見えたが、よく見ると小型の哺乳類のようだ。おそらくネズミの仲間だろう。餌でも探していたのか、付近のぬかるみにもたくさん足跡が残っていた。  体重が軽く足の短い彼らは、地面が少し固すぎれば跡はほとんど残らず、逆にやわらかすぎる雪の上などでは足跡というより体全体を引きずったような跡になってしまうため、中型以上の動物と比べて足跡が鮮明に残るのは珍しいように思う。  地面に細かな土やインク…

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