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No.145 「神道と動物」

2020年01月発行

 

「神道と動物」


野瀬 遵(WMO)

 

1.はじめに

2020年がスタートしました。みなさんは初詣には行かれましたか?行かれた方々はどんな神社にお参りしましたか? 神社にいる(ある?)動物と言えば狛犬ですよね。一対の獅子形の像で「阿吽」や「雌雄」を表し、神前守護のためにおかれています。そんな狛犬ですが、起源はエジプトやインドにあるとされ、朝鮮半島経由で飛鳥時代に日本へ移入したものです。多くの神社に設置されるようになったのは江戸時代頃からと言われており、古代の神社にはありませんでした。そのため古くから形態を変化させない伊勢神宮にはありません。今回は、そんな神道(神社)と動物の話をしたいと思います。

 

2.神道

神道...といってもキリスト教や仏教のようにある日、誰かが唱えたとか神託を受けて始まった物ではありません。いわゆるアミニズム信仰(自然崇拝・民族信仰)発祥のため起源は不明です。八百万の神が存在し、「God」でなく「Gods」を崇拝する民族宗教です(長くなると眠くなるのでこの辺で)。

 

3.神使と動物神の概要

神の使者と考えられている特定の鳥獣虫魚のことを神使(シンシ)と言います(虫もいます。仏教由来の毘沙門天系神社の神使はムカデ!)。神々によって眷属となる対象種は変わってきます。時代が下り、各神社の祭神と縁故関係をもつ特別な存在として灯篭や社殿に彫刻、または境内で飼育しているところなどもあります。

神使のみならず、動物自身が神として祀られることもあります。神々は大別すると自然神(自然現象を神格化した神)と文化神(生活にかかわる神)に分類されます。前者の自然神はさらに天体や気象に関係する上界の神々と、地形や地上での自然現象に関係する地上の神々に分かれます。この地上の神々の中に動植物の神格化が属します。

 

4.代表的な動物達

4-1-1.キツネ

最も有名なのは「お稲荷さん」でおなじみキツネではないでしょうか。京都府にある伏見稲荷神社が稲荷系の総本宮とされています。農耕神である宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)を中心に数柱の祭神を祀っています(キツネ自体を祀る神社もあります)。「稲成り」「稲生り」等が語源とされ、稲の信仰の対象として信仰されてきました。時代の移りから商売繁盛へと拡張し屋敷神として祀る文化もあります。また稲荷を祀るのはキツネが食べるネズミに似せたとの話もあります。

4-1-2.ウマ

ウマは神霊の乗り物として神聖視されることがあり、古代では祈願のため神社に馬を奉納していました。生馬を奉納できないと、神馬を模った木などを奉納し、これが後に絵馬へと変化したとされています。

4-1-3.シカ

シカは武神や雷神とされる建御雷神(タケミカズチノカミ)がまたがって移動したり、手紙を届けてもらったり、仲良し?な関係でした。そのため、春日大社や鹿島神宮では神の使いとされています。

4-1-5.サル

現在も多くのサル達が生息する比叡山。その麓に鎮座する日吉大社の神使はサルです。神猿(マサル)と言って「魔が去る」「勝る」に通じ縁起がよいとされています。ちなみに「サル」のあだ名で知られる豊臣秀吉は縁を感じたのか、日吉大社を厚く信仰していたようです。

4-1-6.オオカミ

オオカミを神格化した神を真神(マガミ)と呼び、シカやイノシシから作物を守る神とされました。その中でも大口真神(オオグチノマガミ)は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の道案内を務めたと言われています。

4-1-7.カラス

道案内と言えば神武東征(初代天皇が日本を制圧する旅)にて神武天皇を案内したとされる八咫烏(ヤタガラス)がいます。また八咫烏は鴨建角身命(カモタケツミノミコト)の化身とされることもあり、諸説あります。

4-2.記紀による違い

つらつらとご紹介した動物達ですが、これらの他にも話がありますし、全く違う話もあります。それは神道の根幹となる歴史書が2種類存在するためです。それが古事記と日本書紀です。天武天皇の勅命により双方は産し、あわせて記紀(キキ)と呼ばれます。双方ともに同じ歴史書であり大まかな流れは同様ですが、内容が異なる点も多いため一部を紹介しました。興味があれば、記紀についても調べてみてください。

 

5.おわりに

神使として神として存在し、崇め奉られた動物達の一部が問題を引き起こし、近年では社会問題へと発展しています。そんな動物達と我々、互いの損を軽減させ、よりよい環境を作っていきたいと思います。

 

引用・参考文献

国学院大学日本文化研究所 1994 「神道事典」 弘文堂

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