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No.141 尾瀬だより ~生物編~

2019年04月発行

尾瀬だより ~生物編~

後藤 拓弥(WMO)

前回の歴史編に引き続き、今回は尾瀬に住む生物にスポットライトを当てます。尾瀬国立公園内および周辺域(南会津町含む)では多種多様な生物を観察することができます。ほんの一部ではありますが、私が確認できた観察種をいくつかご紹介します。

■哺乳類編
哺乳類はニホンジカ、ニホンカモシカ、ツキノワグマといった大型獣からニホンザル、キツネ、タヌキ、テン、ヤマネ、オコジョ等々、小中型哺乳類まで多様な種が観察されます。尾瀬に生息するニホンジカは、これまでの環境省のGPS首輪による調査結果から尾瀬~栃木県域を季節移動する「日光利根地域個体群」と呼ばれ、様々な対策が実施されています。ニホンジカとの関係性が気になるニホンカモシカは複数の場所で目視、幼獣も確認でき、繁殖もしているようです。ツキノワグマはブナ・ミズナラ林を好んで生息しているようで時として木道近くでも確認することがあります。

■野鳥編
尾瀬で野鳥は本当に多く確認できます。カッコウ、ホトトギス、ジュウイチ、ツツドリといったいわゆるトケン四種は全て確認できますし、日本三鳴鳥のウグイス、オオルリ、コマドリといった鳴き声が美しい野鳥もたくさんいます。一方で今シーズンはガビチョウやソウシチョウといった外来鳥も確認されました(初報告?)。以下は観察種リストです。大部分は鳴き声による確認です。

【尾瀬国立公園内及び周辺域で確認した野鳥種(順不同)】
カルガモ、マガモ、オシドリ、ダイサギ、アオサギ、カイツブリ、カッコウ、ホトトギス、ジュウイチ、ツツドリ、フクロウ、オオジシギ、イワツバメ、ヤマドリ、イワヒバリ、コゲラ、アカゲラ、アオゲラ、オオルリ、コルリ、キビタキ、ノビタキ、ホオアカ、ホオジロ、アオジ、エナガ、キジバト、メジロ、カワガラス、ヤブサメ、エゾムシクイ、センダイムシクイ、メボソムシクイ、ビンズイ、アカショウビン、ジョウビタキ、ルリビタキ、ミソサザイ、カワガラス、モズ、マヒワ、アトリ、コマドリ、キクイタダキ、サンショウクイ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、トビ、ミサゴ、オオタカ、スズメ、ヒヨドリ、ツグミ、アカハラ、ムクドリ、カケス、ハシボソガラス、ホシガラス、ハクセキレイ、キセキレイ、カワラヒワ、ベニマシコ、ウソ、イカル、ガビチョウ、ソウシチョウ(69種)

■昆虫編
最近はカマキリ先生こと俳優の香川照之氏が話題となり、国立科学博物館で昆虫展が開催されるなど、「昆活(こんかつ)」が俄かに注目を集めています。虫取り少年だった筆者も然り、尾瀬の生態系の裾野を支える昆虫たちは非常に興味深い対象です。これまで見たことがない昆虫を数多く見つけることができ、少年時代に戻ったように図鑑を捲る日々です。そんな尾瀬での昆活で出会った昆虫たちの一部をご紹介します。






■最後に
どこまでも続く木道を歩く足を止め、目を瞑ると自分の五感が研ぎ澄まされます。耳をすませると様々な生物の命の鼓動が聞こえてきます。風の音、せせらぎの音、葉が擦れる音、木々が揺れる音、野鳥が囀る声、セミが合唱する声、トンボが旋回する羽の音、魚が水面を跳ねる音…。尾瀬国立公園及びその周辺域ではここではご紹介しきれないほどの多くの生物が生息しています。皆さんもぜひ尾瀬に足を運び、生命の営みを感じてみてください。

■番外編
そんなこと言っても尾瀬までアクセスが遠いし、歩いていくのは大変そう、と感じた方もおられるかもしれません。そんな貴方に朗報です!福島県側の出入り口、檜枝岐村には「ミニ尾瀬公園」なるものがあります。車で下りて橋を渡るとすぐそこに尾瀬が…。様々な方にもっと身近に尾瀬を楽しんで欲しい、といったコンセプトで1999年に開設され、国立公園内のような木道を歩きながら6,7月には尾瀬に咲くミズバショウやニッコウキスゲといった季節の花々、そこに住む生物たちを観察することができます(一部バリアフリー化で車椅子の方でも入園できます)。ただし、「ミニ」といっても夏場は尾瀬と同様に暑く、水分補給は必須ですのでご注意を!

■参考文献
・環境省HP 尾瀬国立公園各種資料(https://www.env.go.jp/park/oze/data/index.html
・ミニ尾瀬公園 尾瀬檜枝岐温泉観光協会(http://www.oze-info.jp/spot/minipark/
・新版 日本の野鳥 写真・解説 叶内拓哉 山と渓谷社
・フィールドガイド 日本のチョウ 日本蝶類保全協会編 誠文堂新光社
・日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ 槐真史編著 文一総合出版
・日本の昆虫1400 ②トンボ・コウチュウ・ハチ 槐真史編著 文一総合出版
・シカ問題を考える 高槻成規 山と渓谷社
・尾瀬 自然観察手帳 編著 猪狩貴史 JTBパブリッシング

 

 

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