No.147 日本百名山と私とシカ
日本百名山と私とシカ
関 香菜子(WMO)
日本百名山、テレビでも目にする機会が多くその存在は一般的なものかと思います。登頂ツアーも沢山組まれていて、「全部登頂済み!!」「全部言える!!」という人は意外と多いかもしれませんね。
幼少のころから山に親しんでいた私ですが、25歳の時、ふと「そうだ。日本百名山全て登ろう!!・・・60歳までに。」と言い出しました。その時点で、100座のうち富士山・筑波山しか登っていなかったのですが・・・。ただ、日本百名山の最年少登頂記録は6歳という記事もありますし、一般の方でも数年で登りきることがあるので、かなり守りに入った現実的な目標でしたね(苦笑)。35年間、毎年2~3座登頂すれば目標達成です。
目標を立てたころの私は、日本百名山がどんなものなのかきちんと理解していなかったと思います。いわゆる日本百名山は、日本の小説家であり登山家でもある深田久弥氏が、実際に登頂した山の中から自身が定めた基準で選んだ山です。
・品格:誰が見ても立派であるか
・歴史:昔から人との関わりが深くあるか
・個性:他にはないような個性があるか
という基準をもとに、100座を選定しています。また、付加的な要素として多くが1,500m以上の山で構成されています(筑波山、開聞岳を除く)。例えば富士山。誰が見ても立派ですね。また、富士山山頂には浅間神社の奥宮があります。富士山8合目以上は奥宮境内地であり、信仰の地として昔から人との関わりが深い地域です。また、日本一の標高を有しその独立峰としてのフォルムは、他とは比べがたい個性がありますよね。このような観点から、日本百名山は選定され、深田久弥著書の「日本百名山」としてまとめられています。目標を立てたころの私はこの本を読んでおらず、実際に山頂に立っても、なぜこの山が百名山なのかわからないことがありました。しかし、この本を通してその山への理解は深まり、より登山が面白くなったと感じています。ただ、著者の表現が独特なことに注意が必要です。富士山に関しては「ただ単純で大きい」「地面から噴き出した大きな土のかたまり。ただの円錐の大図体にすぎぬ山」と表現されています。その上で、「富士山は何者にも許さない何物かをそなえている」と。登ったことがある人ならこの表現、納得する部分もありますね。クセの強い本だと思いますが、私と同じように百名山踏破を目指す人は、一度この本を読んでみたらいかがでしょうか。
瑞牆山山頂からの眺望
さて、前述の通り、品格・歴史・個性という基準をもとに選定された百名山ですが、多くが1,500m以上の山で構成されていることから貴重な高山植物が自生している地域が数多くあります。しかし、その百名山の多くでシカによる植生被害を目にします。紹介するときりがないですが、例えば剣山や大峰山、大台ケ原、伊吹山、霧ヶ峰、大菩薩嶺、日光白根山などでは頂上付近までシカの痕跡が色濃く、シカによる食害被害や踏み荒らしが問題となっています。最近では、そのような地域でのシカの被害対策として、防護柵の設置事業や捕獲事業の実施が、国や県の事業として進んでいます。花の山として知られる伊吹山や霧ヶ峰では、頂上付近の展望の良いところに、広大な防護柵が設置されています。シカを捕殺することなく、貴重な植物を守ることができる方法なので、必要な箇所については積極的に実施していくべきと考えていますが、イチ登山者の短期的な目線では少し残念な景観だな。っと、思ってしまいますね。とはいえ、その地域のシカと植物のことを考え、どのように管理していくべきなのかは難しい問題です。各地で関係者や専門家により管理の方針が検討されていて、そういった場のお手伝いをさせてもらうこともありますが、長期的な視点と粘り強さ(合意形成・対策)が重要だと思う今日この頃です。
伊吹山山頂付近でのシカ柵設置状況
話は大きく戻りますが、百名山踏破目標に対する達成状況ですが、無理せず最低ライン毎年2座を登っていて、本当に60歳までかかりそうな状況です・・・。今年は新型コロナの影響もあり慎重にならざるを得ないですが、のんびりとした目標ですので、皆さんも一緒にゆるーい目標に基づくゆるーい登山、いかがですか。
ちなみに、私が初めて上った百名山は「筑波山」です。関東近辺に住んでいた私が、小学校の課外授業で登ったものです。ただし、ガマ油というものが売店で沢山売っていた。という記憶が大部分なので、目標設定後に再度登り直しました。
日光白根山から望む五色沼
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