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No.87 エキゾチックアニマルに思う

2005年07月発行
エキゾチックアニマルに思う

名矢 結香(WMO)

 

  エキゾチックアニマルという言葉をご存知でしょうか。厳密な定義はないようですが、実際にはイヌ・ネコ以外の伴侶動物を指します。ここには哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして魚類や昆虫を含むこともあります。

  最近はペットショップに行くと、驚くほどたくさんの種類の外国産の動物?エキゾチックアニマルを見ることができます。またインターネットで手軽に購入することもでき、輸入を代行してくれる業者などもあるようです。

財務省貿易月表によると、2004年には哺乳類は488,742頭、鳥類63,312羽、爬虫類752,354匹、両生類は19,201匹が輸入されています。もちろんこれら全てがコンパニオンアニマルとして飼育されている訳ではありませんが、それにしても1年間にこれだけの生きている生物が輸入されているという事実に驚きます。生きている、ということはその多くが繁殖能力、移動能力を持つということであり、また感染症を長期間に渡って保持し、伝搬する可能性も高くなるということです。

現在、日本各地で外来種によって生活被害や産業被害などの社会問題が引き起こされています。哺乳類だけでもアライグマやタイワンザル、タイワンリス、マングース、ヌートリアなど枚挙にいとまがありません。今年6月1日から外来生物法が施行されましたが、環境省の広報のなかで謳われる「入れない(悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない)、捨てない(飼っている外来生物を野外に捨てない)、拡げない(野外にすでにいる外来生物を他地域に拡げない)」のなかの「入れない」という部分が今後これ以上外来種による問題を引き起こさないためにもっとも重要なことだと思います。

もっとも、ペットショップで販売されているたくさんの動物たちが必ずしも輸入された動物とは限りません。日本国内で繁殖された動物もいますし、輸入されたものでも海外で人の手で繁殖された個体もいます。そして、海外で捕獲された野生動物もいます。

あくまで個人的な意見ですが、私はエキゾチックアニマル、特に海外で捕獲された野生動物を飼育することに反対です。

■ 海外からの感染症の持ち込みの危険性

日本は世界の他の地域よりも感染症が少ないですが、それは衛生状態がよいこと、寒冷な季節があること、そして国土を海に囲まれ物理的に侵入が抑えられていることがあります。このせっかくの利点を海外からの動物の輸入によって感染症持ち込みの危険を増やしています。もちろん検疫制度があるわけですが、残念ながら全ての動物種の検査をしている訳ではありません。以前はペストの感染源となるプレーリードッグや狂犬病を伝搬するコウモリ類は検疫を受けずに国内に入っていました。海外での感染症の発生例を受けて、日本ではこれらの動物の輸入禁止措置がとられましたが、下手をしたら日本でこれらの人獣共通感染症が発生していた可能性もあるわけです。今現在どんどん日本に入ってくる海外の動物がどんな感染症を持っているのか実際にはわからないことも多く、日本では発生していない感染症が今後輸入動物を介して導入される可能性は決して低くないと思います。

■ 日本固有の生態系を乱す危険性

可愛い伴侶動物を故意に放逐する人は多くはないかもしれません。しかし、移動能力を持つ動物の場合、逸走する可能性は常にあります。人の手を離れた時、生き延びることができない場合もあるでしょうが、環境に適応した場合日本固有の生態系への影響は深刻なものとなります。長い歴史のなかでゆっくりと複雑に関わり合いながら築かれてきた独自の生態系が、突然の外来種導入に対応できないと被捕食者や競合者の個体数減少や絶滅を引き起こす場合もあります。また国内に外来種の近縁種が存在する場合、在来種との交雑の危険性があり、純粋な在来種の絶滅を引き起こしたり遺伝的多様性を減少させることにもつながります。

■ 輸出国の生態系を乱す危険性

海外で野生動物を捕獲して日本へ輸出する場合、現地で乱獲が起き個体数が減少する危険性があります。それによりその国の生態系を攪乱してしまうことになります。

■ 動物福祉の観点からの憂慮

生き物には、それぞれに適した環境というものがあります。温度や湿度、飼育施設の広さや材質などの飼育環境、そして餌の種類や頻度などは動物の健康に直接関わります。外国産の動物は、日本の気候に適応して進化した訳ではありません。また、動物種によっては人の快適な環境がその動物にとって適していないこともあります。私はその動物が本来生きていた環境を作ることが飼養者の義務であると考えます。また、あまり飼育例の多くない動物種の場合、飼育のノウハウや生態や生理、疾病などについてよくわかっていない可能性が高く、病気になった時に診てくれる獣医さんが見つからないようなこともあるでしょう。

可愛い動物と共に生きたいという気持ちはよくわかります。珍しいペットを飼うという優越感もわからなくもありません。しかし、彼らは生きています。動物自身をファッションの一部のように安易に購入するべきではないと思うのです。珍しい動物を安易に販売することにも反対ですが、それを防止するにはまず消費者がよく考える必要があると思います。また、飼育すると決めたならば、責任をもって世話をするという基本的なことを守るべきです。珍しい動物をもてはやすような風潮、文化を考え直すことが諸問題解決の糸口になるのではないでしょうか。

世界のなかで、日本は野生生物の消費大国と言われています。これは決して名誉なことではないと認識するべきです。

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