2004年3月記事一覧
No.21 切ない夕暮れ -サルとわたし-
岸本真弓 約10年ぶりに栃木県足尾を訪れた。2年前の2月のことである。 以前は足尾にWMOのステーションがあり、集中してシカやカモシカやクマの調査をしていた。定点調査で初めてカモシカをじっくり見たのは足尾鉱山だった。何十頭というシカが集結しているのを初めて見たのも足尾の三川合流部だった。(関西ではお目にかかれない)落葉広葉樹林が連なり織りなす紅葉の海を初めて見たのもクマを追っていった先だった。あの頃、足尾でサルの話なんか聞いたかな? サルはいた。5日間の追跡調査中、ずっと足尾の町の中にいた。公園でくつろぎ、商店…
No.20 そこはイノシシパラダイス
名矢結香 先日、神戸の六甲山のイノシシ調査に行く機会があった。噂にはきいていたが、そこは想像をはるかに上回るイノシシの楽園だった。 WMOでは六甲山でイノシシの通るケモノ道に有刺鉄線を張り、イノシシの体毛の採取を試みている。その毛からDNAの抽出をして個体識別をし、個体数の算出をしようという、遺伝研究室泣かせの壮大なプロジェクトだ。 その日はその有刺鉄線 – ヘアートラップ – の見回りを行う予定だったのだが、トラップの場所まで来て驚いた。閑静な住宅街からほんのすこし林に入っただけなの…
No.19 森の下っ端運び屋
吉田淳久 ツキノワグマの生息密度を調査するのに、ヘアートラップ法というのがある。木の間に蜂蜜をぶら下げ、その周囲2,3m四方に有刺鉄線を張り、やって来たクマの”毛”を採取してDNAを調べるのである。 先日、蜜の交換に行くとトラップは破壊され、蜜は無くなり、木にはクマの爪跡がはっきりと付いていた。有刺鉄線に付着した毛も大量!少し興奮気味に毛の採取と蜜の交換作業を始める。しかしクマの存在を実感しての作業は、いつもより周囲の音や気配に敏感になる。なにせ大好きな蜂蜜を配達しに来ているのだから。カバ…
No.18 イノシシの痕跡
河内紀浩 山を歩いていると樹皮がなくなり、白くなっている木を見ることがある。よくよくみると毛がたくさんその木に付いていて、毛はまだら模様で、枝毛になっている。この毛はイノシシである。 イノシシは体をすりすりと木などにこすり付ける習性がある。しかし、なんぼイノシシでも体を擦りつけただけではこんなに激しく樹皮がはがれないだろうと思い、細かく見てみると、牙跡も発見、しかもどう見ても立ち上がって牙で削っている場所もある。何で、立ち上がるのか不思議で仕方ないけど、わからん。 いつか、こんな姿を見てみたいと考えつつ、今日も山…