No468 春はどこから?
2025年04月20日
森洋佑
3月から4月にかけて「桜前線が北上しています」というニュースをよく聞きます。
春は南からやって来て北に登っていきます。標高が高いほど気温が低くなる山の場合はどうでしょう。
ふつう春は山裾からやってきて山頂に向かって登っていきます。
そうした視点で見ると、この写真、少しおかしいと思いませんか?
山頂の方はまだ雪が多く残り冬の様相です。中腹は葉が展葉して緑に染まりつつあります。
しかし、、、山裾はまだ葉っぱが出ていなく、冬寒い茶色の枝が並んでいます。
もしかしたら、春は山の中腹からやってくるのでしょうか??
この秘密は、この林の中を歩いてみると分かります。中腹で葉を広げているのはブナです。一方、山裾の茶色い枝はミズナラです。ブナはミズナラよりも早く展葉するのですね。
ではなぜブナはそんなに急いで展葉するのでしょうか。
諸説ありますが、そのうちのひとつは競争相手を少なくするため、と説明されます。
上層のブナが展葉すると林床(林の中)は一気に暗くなります。そうなると、他の植物は光が足りなくてなかなか大きくなれません。
ブナはそうして競争相手が大きくなれないようにしているのです。
しかし、他の植物も負けてはいません。雪が溶けてブナが展葉する少しの間、まだブナの葉が薄く林床に光が届く少しの間に花を咲かせる植物もいます。
こんなふうに春の一瞬に花を咲かせる植物を「春の妖精(スプリング エフェメラル)」と呼びます。オオバキスミレもそのひとつです。春の柔らかな光が漏れてくるブナ林の中で凜と咲いていました。
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