No.219 愛蛇
2015年06月03日
岸本 真弓
2014年は9月から恒例のシカ糞調査が始まった。例年より1ヶ月早いため、山の空気もずいぶん違う。見とおす先は緑に揺れ、足下には草が立つ。旅立つ前の夏鳥の声が聞こえ、体が暖かな両生爬虫類たちは元気だ。
カナヘビは機敏だ。こちらが気づいた時にはもう姿が見えない。カサカサカシャーッという音が、まるで離れたところに届く花火の音のように、すべてが終わってから脳に届く。ところが、珍しく切り株の先端で動かないカナヘビがいた。最初は遠くから、徐々に間合いをつめて撮影していくが、まるで金縛りにでもあったように動かない。とうとうドアップで写真が撮れた。
カナヘビの語源は可愛いらしい蛇の意で「愛蛇(かなへび)」という説も、それは誤謬だという説もあるらしい。ゆっくり見ることのできたカナヘビは愛蛇といにふさわしい愛らしさであった。
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