No.277 しし神さまの檜皮敷(ひわだじき)
2017年08月07日
岸本真弓
京都の山。シカの密度が高く、下層植生はほとんどない。最初に草本類やササが消え、やがて低木、そして中低木が消失していく。
シカの糞塊数を数えていく調査では薮がなくなり、下層植生も少なくなれば、歩きやすく見落としが少なくなって精度の高い調査ができる。
が、やっかいなことが起こることもある。シカの嫌いな植物(フォトブログNo.89)の繁茂だ。特にアセビはやっかいだ。常緑の低木が膝丈くらいでみっちり生えていると、足下が見えにくい。背丈くらいで密生していると歩きにくい。
やっかいだと思っているだけではどうにもならない。でも、どうしようもない、私には。
しかし、しし神様は違う。あるものは有効に使うということだろうか。アセビを寝床にしてしまった(写真1)。
イノシシはササを切って集めてベッドのようにする(フォトブログNo.143)。それにアセビを使っていた。ササをシカに食べられてしまったからというのもあるかもしれない。わがもの顔に繁茂するアセビの有効活用か。それだけでも十分驚いていたのに、さらに驚くべきことが。なんとアセビの上にヒノキの皮が敷きつめられていたのだ(写真2)。横には切り取った跡が(写真3)。アセビはササに比べると枝が固くてごわごわしていたからなのだろうか。
あの体で、どうやってこんな繊細な仕事をするのだろう。本当に一度見てみたい。
写真1.アセビの寝床
写真2.檜皮敷された寝床
写真3.檜皮採集跡
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