研究員によるフォトブログ

No.282 奇跡と儚さ

2017年10月09日

海老原 寛

シカの調査で山の中を歩いていたところ、尾根上に突然ササが現れた。ササが占める面積は直径2m程度であり、ササ藪と呼べる広さではない。近くにササ藪があってそこから伸びてきたわけでもない。集落近くでもない。本当に突然、尾根上にササが現れたのである。ササは一般的に、地下茎を伸ばして専有面積を拡げていく。それでも何十年かに一度は花を咲かせ、種子を作るようである。そんな何十年かに一度作られた種子がこの尾根上に落ち、しっかりと成長しているのだろうか。また、不思議なことにこのササはとても窮屈そうに限られた範囲に密生している。ササに詳しくないのだが、そのような性質を持っているのか?はたまた、決められた範囲から拡がることができない理由があるのだろうか?ササの種子が作られ、それが縁もゆかりもない場所で成長した奇跡と、生きることを制限された儚さを同時に垣間見る瞬間だった。

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