No.349 鹿の一声
2020年01月28日
海老原寛
野生動物を相手にすると、基本的には「待ち」が多い。サルの群れの個体数調査も「待ち」である。見通しの良い道路などを群れが渡るのを先読みし、ひたすら待つ。長い間待って、狙った場所にサルが見え始めたときは、妙にウズウズしてしまう。
ある群れを追跡していた時、翌日の朝に渡りそうな道路付近で群れが泊まった。次の日は早起きし、日の出前から待機した。2時間ほど待って、やっとサルたちが法面に見え始めた。時間が経つごとに、どんどん数も増えてくる。
「そろそろ渡り始めるぞ!」とドキドキウズウズしながら待っていると、突然「ピャ!!!」という鳴き声がした。シカの警戒声である。私に向けてのものだったのだろう。その声を聴いて、サルたちは道路を渡らずに、森の中へ帰って行ってしまった。こっちは2時間も同じ場所で待っているのに・・・。余計なことするなよ・・・。
(運よく、この約30分後に群れは道路を渡ってくれました)
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