2011年5月記事一覧
No.142 鵺の森
山田 雄作 鵺をご存知でしょうか? 鵺(ヌエ)とは頭が猿で胴体が狸、手足が虎で尻尾が蛇の姿をした妖怪です。 調査で夜間の山に入ると時折、鵺の声を聞くことがあります。右の写真は調査時にその声が聞こえてきた林内を写した写真です。怪しげな発光体はともかく、どこにも妖怪の姿は写りませんでした。 実は私たちが聞いた声の主はトラツグミという鳥です。トラツグミは日本の本州四国九州に生息し、昔から鵺のように鳴く鳥とされてきました(逆に鵺がトラツグミのように鳴くともいいます)。 現代は調べればたいていの事象は明らかになり、も…
No.141 ツバメ家族との出会い
姜 兆文 2010年、南アルプスのシカ調査期間の7月30日早朝、宿の前にある芦安集落のメインロードを散歩した際、ヒナを育てているツバメと出会った。バスターミナルの白い建物のドアのそばに巣があり、親鳥が餌を運んでくると5羽のヒナは並んで大きなクチバシを開いて、幸せそうに受け取っていた。この光景を見て、幼い頃田舎の実家の玄関でヒナを育てていたツバメのことを思い出して、懐かしかった。 ご存知のように、ツバメとスズメは人間と同じ生活環境に生息している代表的な2種の鳥である。人類が農耕社会になると共に進化した結果だと思う…
No.140 寒中水泳
佐伯 真美 吐く息も白くなる真冬の寒い日に、寒中水泳を楽しむ?サルがいた。 ダム湖でサルの群れを観察中、喧嘩により逃げ場を失ったオトナオスが湖に飛び込み、約200m先の岸まで泳ぎきるのを目撃した(写真1)。このオトナオスは逃げ場を失ったのだから、まだ致し方ないと思えたのだが、その翌日、別の群れの老齢メスが湖を悠々と泳いでいるのを目撃した(写真2)。何か騒ぎがあった訳でもないのに、この寒い最中、何故、老齢メスが泳いでいるのか理解し難い。その後、この老齢メスは約100m先の岸まで泳ぎ、岸辺で日向ぼっこをし始めたのだが…
No.139 羊歯の海(行く手を阻むもの4)
岸本 真弓 これまでの調査人生、最大の薮は15年ほど前、和歌山で立ちはだかったシダだ。高さは2mを越え、手の届かない上空で葉は笠のように覆っている。周囲は壁。茎が土壁の木舞のようにびっちり編まれている。押しても引いてもビクともしない。狭い足下でピョンと跳ねて全体重をかけて背中から倒れてみるとわずかに壁が窪む。それを数十回繰り返してようやっと数m進むという持久戦。過去第二の強敵はその後徳島で出会った。そのときは押し出されて涙の敗走だった。 写真は昨秋の和歌山。このくらいなら負ける気がしない。身長差30cm以上、登…