No.141 ツバメ家族との出会い
2011年05月23日
姜 兆文
2010年、南アルプスのシカ調査期間の7月30日早朝、宿の前にある芦安集落のメインロードを散歩した際、ヒナを育てているツバメと出会った。バスターミナルの白い建物のドアのそばに巣があり、親鳥が餌を運んでくると5羽のヒナは並んで大きなクチバシを開いて、幸せそうに受け取っていた。この光景を見て、幼い頃田舎の実家の玄関でヒナを育てていたツバメのことを思い出して、懐かしかった。
ご存知のように、ツバメとスズメは人間と同じ生活環境に生息している代表的な2種の鳥である。人類が農耕社会になると共に進化した結果だと思う。穀類を採食し、害鳥と思われ、人間に強い不信を持たれるスズメとは対照的に、害虫だけを採食し、古くから益鳥と見られたツバメは人間に近いほど安全と思って、部屋の中に巣を作ることが普通である。部屋主はツバメが出入りしやすいように、入り口などを設置していた。
人間は、自然保護や野生動物との共存への意識を高めている一方で、自然界の野生動物との距離感が遠くなる傾向にある。
その一例として人間と共に生息しているツバメとスズメが巣を作りにくい建物ばかりを建設していることがある。近年の生息状況調査結果によると、ツバメとスズメの生息個体数は急激に減少し、分布範囲も狭くなりつつある。自然の生物多様性保護と言えば、まず身の回りの生物多様性を守ることが最優先すべきことではないだろうか。そのため、この2種の鳥に優しい生息環境になるように真剣に取り組むことが重要であると思う。
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