2018年12月記事一覧
No.316 ご馳走の穴
海田 明裕 雪の林道を歩いていると 少し先をネズミ(ヤチネズミ?)が横切ってすぐに姿が消えた。 ちょうどそのあたりの一点に妙に中型哺乳類の足跡が 集中しているのが目に入った。 足跡の主はタヌキとテン、とネズミ。 小さな段差を覗き込むが雪とのコントラストが強すぎて 暗い窪みの奥はよく見えない。 手を突っ込んでみる。 直径が指三本ほどの穴が空いていた。 入り口にはネズミ糞もしてあった。 食べ物をさがしてウロウロ林道を歩く 「ンッ!ご馳走の香り!」匂いに気づいてか、 元を辿って穴に誘われて鼻を突っ込む姿を想像する。 ふと…
No.315 北陸のリョウブの樹皮
海老原 寛 北陸地方の山を歩いていた。北陸地方はまだシカの密度が低い場所が多く、植生が元気に繁茂している。下層から低木まで、近畿地方ではお目にかかれないような景色が続いていた。おかげで私たち調査員は歩きづらいわけで悲しくもあるが、やはりうれしくもある。 下層植生の繁茂もうれしいことではあるのだが、特に感動したのは、リョウブの樹皮が全く剥がれていないことである。シカは様々な種類の木の樹皮を剥ぐが、特にリョウブは大好きなように感じる。言い過ぎかもしれないが、私は樹皮が剥がれていないリョウブを見たことがないかもしれないほ…
No.314 痛し痒し
岸本 真弓 秋、山を歩くと頭上も足下も赤や黄色の葉で覆われている。たまに樹皮も真っ黄色?! シカに角研ぎされた樹皮から黄色の樹液があふれでている。外来種キョンの大好物カクレミノ(隠蓑:樹木の種名)である。 カクレミノの樹液は、最初は透明らしく光沢もあり、実際黄漆として家具の塗料として使われていたという。そう、カクレミノの樹液にはウルシオールが含まれており、かぶれることもあるそうだ。そういうものに滅法弱い私なんぞは一発であろう。痛くも痒くもないシカにカクレミノは痛めつけられ、私は痒くされる。