研究員によるフォトブログ

No.315 北陸のリョウブの樹皮

2018年12月20日

海老原 寛

北陸地方の山を歩いていた。北陸地方はまだシカの密度が低い場所が多く、植生が元気に繁茂している。下層から低木まで、近畿地方ではお目にかかれないような景色が続いていた。おかげで私たち調査員は歩きづらいわけで悲しくもあるが、やはりうれしくもある。
下層植生の繁茂もうれしいことではあるのだが、特に感動したのは、リョウブの樹皮が全く剥がれていないことである。シカは様々な種類の木の樹皮を剥ぐが、特にリョウブは大好きなように感じる。言い過ぎかもしれないが、私は樹皮が剥がれていないリョウブを見たことがないかもしれないほどである。
シカは日本にいなくてはならない動物である。気候や地質の影響などももちろんあるが、大型草食獣であるシカがいたからこそ、今日までの日本の植生が形作られてきたと言えるだろう。それでも、やはり現在のシカの個体数の増加はすさまじく、分布域は北陸地方へも拡大していくであろう。最近では、富山県南部に生息するシカがヤクシカの遺伝子型を持つことがわかったことなど、人為的な影響によってもシカが増えていくかもしれない。
この地域のリョウブの樹皮がきれいなままでいられるように、全国でも剥がされていないリョウブの樹皮が見られるようになればいいなと思った。

  

写真1 シカに樹皮が剥がされていないリョウブたち    写真2 シカに樹皮を剥がされてしまったリョウブたち

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