研究員によるフォトブログ

NO.110 倒木だらけ

2010年07月16日

姜 兆文
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 倒木、倒木!また倒木!!今年は倒木だらけだ。奥多摩地域のニホンジカ(以下シカとする)を調査するため、2005年から6年間連続で毎年11月末と5月上旬に2回、登った。今年、特に沢沿いの斜面は写真で示したように倒木が多く、山の状況が急変していることに驚いた。もちろんいままでも心配はしていた。
 昨年の冬期には特に異常気象も発生していないのに、なぜ倒木が多数発生したのだろうか。やはり、これはシカの個体数の増加に伴い、シカが下層植生を採食することにより森林生態系に対して悪影響を及ぼしていることと深い関わりのあることが考えられる。
 80年代から全国的にシカの個体数が急増し、農・林業と自然生態系に対する被害面積も急速に拡大した。シカの強い採食圧により下層植生の衰退と消失を招き、露出された薄い土壌層は降雨で流され、木の根は浮き、最終的に倒れることに至ったと思われる。私はこれが、ここ30年くらいで起こっているシカの過剰採食による生態系に対する悪影響が量的な変化から質的な変化へシフトしたのではないかと考える。
 上記の変化の過程は急斜面から始まり、緩やかな斜面に進み、最終的に山全体に及んだと考えられる。これ以上、最悪な状態にならないため、常に危機感を持って、効果的、現実的、迅速的な対策を講じることが不可欠である。

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