研究員によるフォトブログ

No.25 鹿糞百態

2004年08月19日

岸本 真弓
 昼間はセミの大合唱に暑さが変わらぬ思いになるが、早朝には秋の風波がかすかに届くようになった気がする。秋と言えば、秋祭りならぬシカ調査大巡業だ。関西分室ではもう5年以上前から、草が果て足下見やすくなり、狩猟者の訪れる前の時期、10月下旬から11月上旬にかけてシカ糞塊密度調査にでかける。個体数を把握するのが難しいシカの密度指標を得るためのモニタリング調査である。昨年は、福井県、徳島県、兵庫県、滋賀県と渡り歩き、約20日間の調査だった。
 糞塊密度調査とは、山の尾根を歩いて糞塊数を数えるという単純なものだ。糞塊とは、一頭のシカが一度に排出する糞粒のかたまりのことを言う。一度に排出したものか、別の時のものか、別の個体のものかは糞をじっくり観察して判別する。「そんなことできるのか」と思われる方もいるかもしれない。しかし、ようく見るとシカの糞はバラエティに富んでいる。
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 まずは形がいろいろだ。丸いものから、細長いもの。先にとんがりがあるもの、ないもの。へなちょこにつぶれたものや、いくつもがかたまったもの。
 それから大きさがいろいろだ。長径が5mmに満たないものから2cmを越えるもの。
 それに野に放たれてからの経過時間による鮮度の違い。排出直後で腸粘膜が見えるがごとくヌメヌメ、艶々しているもの。やや時間が経ち、漆黒になったもの。乾燥が進み、繊維が見えるもの。崩れ始めたもの。
 これらを総合的に判断し、シカの生態に思いを馳せれば比較的容易に糞塊を区別することができる。
 同じような鮮度で大きさの異なる糞が同じように落ちている。親子かな? 形のそろった巨大な糞、何種類かの鮮度のものが近くに落ちている。いつもここにきているオスがいるのかな?
 そんなことを想像しながら今年の秋も糞数えます。

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