No.41 自虐的サル発見
2006年12月06日
名矢 結香
長野県でのサル追跡でのこと。
サル達は林縁からトウモロコシやリンゴを狙っている。私は車から観察をしていた。
すると、成獣のオスが何か気に食わなかったのか、口を開けながら近寄ってきた。ここまではよくあることだ。しかしこの後、このオスザルは見たことがない行動をした。
犬歯を見せながら目を剥き、そして右手に力をこめて…..ガブリ。
噛み付いたのはなんと自分の右手。
まるで、「近寄ってきたら、お前もこの右腕みたいに噛んじゃうぞ」とでも言いたげだ。もちろん力一杯噛んでいる訳ではないけれど、こんな威嚇の仕方は初めて見た。人間への恐怖と正義感(?)のはざまで揺れ動いた葛藤の現れなのか、それともやはり威嚇アピールなのか。
こんな行動をしたのはこの群れのなかでも、このオスだけだったのだが、翌日調査に入った調査員もこのガブリ威嚇を受けたらしい。
威嚇のスタイルにも個性があると知った夏だった。
[編集者注]この自分の手をかむという行為は他のWMO職員も時々見ています。霊長類行動学の専門家の方にお話をうかがったところ、「飼育下のサルでもたまに見られます。威嚇からの行動というより、むしろ本当に攻撃したい衝動が自分の手に向いているといったほうがよいかもしれません。」というコメントをいただきました。
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