2016年6月記事一覧
No.247 毒肉強食
岸本 真弓 四国のある県でのこと。調査を終えて集合しようとしていると、仲間がなにやら夢中になっている(写真1)。 近づき、説明を受けながら目をこらし、焦点を合わせるとなんと! 蛇が蛇を食べていた(写真2)。よく見れば食べられている個体はマムシの幼蛇である。一方、上半身(? 地面から直立する前1/20身)をえづかせながら丸飲みしていくのはシマヘビ。 大きさが雲泥の差とは言え、マムシは本州最強の毒蛇。どうして勝てないのか。鼠でも追いつめられたら猫を咬むというのに。上あごとか下顎とか、口に挟まれた絶対絶命状態で舌に噛みつ…
No.246 負けるもんか
海老原 寛 全国でシカが増加し、植生の衰退が生じている。その現象の1つとして植物の矮性化があり、シカの影響評価の指標として用いられている。ある地域で見つけたイヌツゲは矮小化の程度が激しく、本当に小さな葉をつけていた。それだけシカの影響が大きいということが読み取れる。しかしそれは、シカを主役に物事を見てしまうからこその視点に他ならない。このイヌツゲは、どんなに繰り返し食べられてもどんなに矮小化されようとも、懸命に生きている。植物を主役にしてみると、生きる執念のようなものが感じられ、尊敬と共に応援をしたくなるのである。…
No.245 やりこみ要素
宇野 浩史 アンテナや受信機、コンパスを駆使してサル群の位置を特定するロケーションは、まるで宝探しゲームのようだ。アンテナを振って発信音が最も強く聞こえる方向に群れがいるという原理は、割と単純に感じるかもしれない。しかし、地形によって電波の入り方が異なったり、電気柵のような発信器に似た紛らわしい電波があったり、はたまたサルを気にしつつ狭い道を駆け抜ける運転技術が必要だったりと、決して簡単なものではない。 このような中、電波の元である発信器の装着された個体を発見することは、このゲームにおけるちょっとしたやりこみ要素だ…
No.244 野生動物とのつきあい方
岸本 真弓 川沿いの道を車で走っていると、川の中と岸にシカがいた。川岸でのんびり草を食んでいたシカも私たちの車が近づくと面倒臭そうに川底に降り、母子3頭とぼとぼと歩きだした。 いったん車の進行方向を確認し、そろりと車を前に出すと・・・ 母子が振り返った、排尿しながら。。。 なんと緊張感のない姿。いったいどういうつきあいが続くと人間とシカはこのような関係になるのだろうか。 これから30年ほどの間に日本人と日本の野生動物との関係は激変するだろう。今は野生動物を殺し、奥山に閉じ込めようと人間は躍起になっている。しかし…
No.243 ミイラ!?
檀上 理沙 昨年春の糞塊密度調査で出会った不思議なもの。ミイラ化したような動物の死体(写真1)。 ミイラとは人為的加工ないし自然条件によって乾燥され、長期間原型を留めている死体のこと(ウィキペディアから引用)を指すらしいが、この写真の動物は顔全体と四肢の先だけミイラ化しているように見えた。ミイラ化といっても、皮膚が乾燥して黒色化したものが骨の表面に張り付いているといった感じで、腐敗の一過程にすぎないのかもしれないが私は見たことがなかったので驚いた。もし、これがミイラだとしたら、私の頭の中は古代エジプトへ飛んでいって…