研究員によるフォトブログ

No.7 クマ生体捕獲用ドラム缶檻のフタ改良の歴史

2002年10月24日

岸本真弓
 狩猟や有害獣駆除のためにクマを捕獲する際、いわゆる田中式オリと呼ばれる鉄格子のオリが使われています。捕獲されたクマはその鉄格子を激しく噛み、その結果クマの犬歯や切歯はボロボロになります。ひどいときは歯茎の高さまで削れてしまいます。そんな状態になってしまっては、その後の生活にも支障がでることは明らかです。そのため、捕獲後放逐してその行動を追跡するような生体捕獲の場合には鉄格子のオリではなく、ドラム缶檻が使われるようになりました。
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 ただ、初期の頃は出入口をふさぐフタの部分に鉄格子が使われ、歯を痛めることがありました(写真1)。その後エキスパンドメタルという七夕祭りの飾りのような仕掛けのものに転換されました(写真2)。エキスパンドメタルの径(?)についてもいろいろと試行錯誤が続けられましたが、結局現在ではさらにパンチングメタルの使用へと移行しています(写真3)。パンチングメタルとは鉄板に小さな穴があいているものです。この穴の径や穴密度はいろいろと選択することができます。
 野生動物を捕獲することで、様々な調査が可能となり、彼らの保護のために必要な貴重なデータが集まります。けれども、捕獲することの、捕獲される個体への肉体的精神的影響ははかり知れず、またその個体だけでなく他の個体、ひいては環境への影響も決して無視できないと思います。私たちは常にそのことを頭において捕獲を行わなければなりません。そして、できるだけマイナスの影響を小さくする努力、そしてプラスの結果をよりたくさん得る努力を忘れてはならないと思っています。
 余談ですが、山の中でこのようなドラム缶檻を見つけても決してふざけて中に入ったりしないでください。人間は向きを変えることができません(写真4)。

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