No.249 ピットフォールトラップ
2016年07月09日
岸本 真弓
ずっと若かった頃、ピットフォールトラップでタヌキの食物となる地上徘徊性甲虫層の調査をしたことがある。
ある年の冬、シカの調査で近畿地方の山を歩いていると、足下に糞虫の死体らしき個体が多数ころがっていた(写真1)。どうしたのだろうとしばらく写真など撮っていたが、ふと前方に目をやると、目の前にあるものと同じものがある。そう、倒れたプラスチック杭だ。そちらの杭の周りにも多数の糞虫の死体(?)がある(写真2)。ふと地面に残る杭の中をのぞく。中にあるものを溜まった水の中から掻き出す。測ってみたら深さが44cmもあったその中には多数の糞虫が落ちていた(写真3)。
翌年、同じ県の同じく冬。違う場所の違う杭の中にまた落ちている糞虫を見つけた。(写真4)
地面との高低差があるように見えるプラスチック杭の断面。どうして糞虫は落ちていったのだろうか。自分の掘った穴よりずっと大きな穴へ。そして集団で。事故ではなく意志?
ここからは推測だが、もしかすると、糞虫たちは集まって越冬していたのかもしれない。ある日雨が降り、底の閉じたプラスチック杭に水が溜まって死んでしまったのかもしれない。さらに多くの雨が降った時、あふれて外にこぼれ出たのかもしれない。だから周りにたくさんの糞虫の死体(らしきもの)があるのかもしれない。この推測あたっているなら、糞虫たちに言いたい。手軽な人工物、信じちゃいけない。それはまさにトラップだ。
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