研究員によるフォトブログ

No.27 逃げないサル

2004年09月22日

吉田 淳久
 野生動物に出会った時には動物との距離を見定めなければならない。よく観察するためには出来るだけ近づきたい。しかし近付き過ぎれば逃げてしまう。また、安全のためにある程度動物たちにこちらの存在を認識してもらうほうが良い場合もある。
そんな駆け引きをしながら、動物に気付かせつつ逃げない所まで距離をつめていく。これがなかなか楽しい。しかし、餌付けされている動物ではこれを味わえない。
 先日某所のモンキーパークを訪れる機会があった。そこは餌付けされたニホンザルが半(?)野生で生活している。その公園内を歩いていると、突然サルに出くわした。
いつもの調子ですぐに立ち止まり、しゃがみこんで距離を計っていると、後からやって来た観光客が私を抜かしてズンズンと歩いて行く。しかしサルはいっこうに逃げる様子も無く、人の方がサルをよけて脇をすり抜けて行った。
唖然としたと同時に、ポツンと一人しゃがみこんでいる自分が滑稽に思えた。さらに歩いていくと餌付け場所の広場にたどりついた。そこには小屋があり、”ヒト”はその中から外の”サル”にエサをあげてキャッキャと喜んでいる。どっちがサルなのか分からない。
 人は文化によって会話の際に快適と感じる距離が違うというが、動物と人間にも適切な距離が存在する。長期の調査から帰宅した時、我が家の猫も手が届きそうで届かない距離を置き、私を観察している。動物たちが里に依存したり、人身被害を引き起こしたりしている状況は、原因は様々だがこの距離感というものが狂っている一つの現れだ。
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今後、ヒトは野生動物とどのような距離を保っていくのか考える必要があるだろう。やはりサルには逃げて欲しいし、我が家の猫には逃げないで欲しい・・・。
*注)この公園ではサルが威嚇行為を示した時は、公園管理者がすぐに威嚇し返し、ヒトが常に優位になるよう気を配っていました。

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