No.42　2006年クマ嵐のあと

横山　典子
　京都北部の常緑広葉樹林の中で糞塊密度の調査中でのことです．林の中を歩いていると，アカガシの枯れ枝がやたらに落ちていました．最初はあまり気にとめず，風が強いところなんだろうくらいにしか，考えていませんでした．しかし，落ちている枝があまりにも多く，気になってきました．まさか，クマがアカガシを食べるとも思えないし･･･と思いながら，上を見上げると，クマ棚らしきものがありました．いやいや，クマ棚なわけがない，アカガシでしょ？と疑いの目で幹に近づいてみると，ありました，クマの爪痕！

　シカの糞塊密度調査は，ただひたすらに下を向いて歩いて，糞塊の数を数える調査です．下ばかり見て歩いているものだから，自分が歩いている上の状況のいろんなことを見落としてきたのかもしれません．
　クマは堅果類ならブナ・ミズナラ・クリを食べているというのが一般的な考えだと思いますが，西日本のようにブナやミズナラのある地域が限られていて，堅果類の種類が豊富なところでは，ブナやミズナラばかりでなく，シイ・カシ類も食べているんじゃないかと密かに考えていました．
　だから，このアカガシのクマ棚を見たときは，「ほれ，見たことか！」と小さく万歳．
　でもアカガシを食べたのは，他に食べるものがなくやむにやまれず食べたのか，それともアカガシが食べたいと思って食べたのか，どっちなんでしょう．いつかクマさんにあったら，聞いてみたい．でもきっとクマさん，近づいただけで怒るだろうし，とても，怖くて聞けない．ま，聞いても答えてくれないだろうけど．

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