No.49 迷い猪
2008年05月14日
清野 紘典
1月徳島県のとある山村、いつものように軽快に軽バンを走らせていると、車道前方に中型の動物が歩いているのが見えた。
小太りの犬かと思い近づくと、それは10kgほどの小さな猪だった。
しばらく遠目で様子を見るが、全く逃げる気配がないので車から降りて背後から接近してみる。逃げない。後を尾行するとようやく状況を飲み込んだ様子。ブヒブヒと小走りで逃げ出した。猪はしばらく車道や側溝を右往左往した後、疲れ果てたのか立っているのがやっといった状態で足が痙攣しはじめた。
と、そこへ軽トラで中年男性が通りかかった。事態を一瞬にして把握したようで「オレがつれて帰る」とニヤリ。軽トラからロープを取り出し、足が痙攣して無抵抗のイノシシを押さえ羽交い絞めにし、軽トラの荷台へと放り込んだ(狩猟において「素手」は法定猟具にも禁止猟法にも該当しない自由猟具にあたり違法ではない。余談だが「投石」や「鷹狩り」等も自由猟具となる)。
間もなく、食卓への直行便が出発した。
去りゆく軽トラの荷台にゆられる迷い猪、今後の運命を知ってか知らずか、身動き取れずに横たわる姿が妙に悲しげにみえた。
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