No.46 仕事の道具(その1)~注射筒の話~
片山 敦司
現場で使われる道具について、何回かに分けて雑文を書くことにする。今回は我々が医療器具として最もよく使う「注射筒(シリンジ)」の変化の話題である。
資源の大量消費・大量廃棄の時代から循環型社会への転換を図る政策が『3R』(廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))のキャッチフレーズの元に推進されている。ディスポーサブル(使い捨て)注射筒も写真1のように、廃棄物の発生抑制のためより薄く・より軽くなった。
医薬品メーカー『テルモ』社は、ホームページで『環境への取り組み』を紹介している(http://www.terumo.co.jp/company/csr/environment_h.html)。そこから注射筒の環境配慮の歴史を抜き出してみた(注:文は短文化するため一部省略した)。
・1980年:シリンジのガスケットを、ゴムから熱可塑性エラストマーへ変更。焼却時の硫黄酸化物発生を防止。
・1983年:滅菌方法に排ガスの発生しないガンマ線滅菌を採用。
・1998年 シリンジの小型・軽量化を実施。シリンジ廃棄重量を約25%削減。
このように環境配慮設計が進むことは実に喜ばしいことだ。我々も常に3Rに心がけて仕事を進めたいと思う。
・・・ところで、この環境配慮は思わぬところに余波を生んだ。我々は2.5mlクラスのシリンジを改造して動物に麻酔薬を投与するための『吹き矢』を作っているのだが、何もかも薄型になったので『吹き矢作り』が難しくなったのだ。元々、我々の吹き矢づくりは『3R』を先取りしたもので、図1に示すように『主要な部品』を使用済のガスケットの再利用により賄っていた。しかし、これから先は厚みのあるガスケットなど部品の調達が難しくなりそうなので、吹き矢は一本一本を大事に使わないといけない。
・・・かくして『もったいない』の精神で我々の環境配慮はますますグレードアップしていく(?)のである。
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