研究員によるフォトブログ

No.145 蛇と蛙、弱肉強食?

2011年06月20日

姜 兆文
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 ある日、富士山北麓で発信機を装着させたシカを追跡するため、狭い林道を車で走行していた。すると、林道の途中に倒木があり、先に進むことが出来なくなってしまった。車から降りると写真に示したように蛇(ヤマカガシ)がカエル(ヒキガエル)を呑み込む光景に遭遇した。瞬間的にカエルを助けようと思ったが、落ち着いてみていると、カエルは一生懸命蛇の口から逃げようとしている。また、蛇も生きるために必死に食物(カエル)を確保していた。これは皆さんがテレビ番組でよく見る、アフリカサバンナの草原に生息するライオンとトムソンガゼルと同じ弱肉強食や食物連鎖の一環である。
 人間は弱者保護の観点、或いは生産活動・日常生活に対する影響に対して都合のいいように解釈し自然現象を色メガネで見るようになった。例えば、カエルは農作物に被害をだす昆虫を食べるので「良い生き物」と認識され、蛇はカエルを食べるので「悪者」というイメージがついた。一方、蛇も植林木に被害をだすネズミを食べるので、「良い生き物」とされる場合もある。
 人間は自然界に対する認識が深くなるほど、自然現象の中に存在する強弱や善悪といった基準を見直すべきであると思った。が…、私はカエルがかわいそうだと悼みながら、そのままにして静かに立ち去った。

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