研究員によるフォトブログ

No.54 仕事の道具(その4)~里山の花火~

2008年08月04日

片山 敦司
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 夜空に広がる打上花火は、夏の風物詩である。一方、爆竹は中国の春節祭(旧正月)を音と火花で彩る初春の風物詩だ。そうした季節感とは少しかけ離れたところで我々も花火を使用する。クマの学習放獣に使う爆竹、サルの追い払いに使うロケット花火など、花火は音響による非殺的被害対策のツールとしても使用頻度の高いものである。花火の発する音響による追い払い効果は短期的には確かにある。しかし、長期的にはどの程度の効果があるものかは定かではない。
 春節の爆竹の由来がWeb上で紹介されている。漢代の中国の書『神異経』・『西荒経』によれば、山奥に棲む妖怪:山魈(さんしょう)は、春節に人里に下りてきて、それに出会った者は高熱を発して死ぬと言われ怖れられた。ある日、農民が山で竹を採って帰る時に山魈と遭遇した。驚いた農民は火の付いた竹を捨てて逃げ出したが、山魈も燃える竹の立てる音に驚き山に逃げ戻った。以来、爆竹は魔除けとして使われるようになったという*1。
 里山での獣害を彷彿とさせる話である。・・・ところで、山魈は木の精でもあり、本当に悪いばかりの妖怪なのかどうかわからない。里に出没する獣たち。彼らに向ける花火も、悪霊退散という忌避の気持ちだけで放たれるわけではない。火花の散る先には被害の低減と獣たちとの棲み分けへの願いが・・・自然共生社会の実現への祈りが深く込められているのである。
※花火の使用時には、山火事の発生はもとより人と動物の双方において過剰な音響の発生による聴力障害、火傷等の防止にも充分に配慮しなければならない
*1:上記の逸話は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の解説記事を引用・改変したものである

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