NO.119 シシガミ様の御力か。
2010年08月11日
横山 典子
とある調査地に出かけたときのこと。
びっくりした。軽トラが森に帰ろうとしている。
日本は、温暖で湿潤な気候のおかげで、土壌中の微生物の活動もほどよく活発で、土壌が発達し、例え伐採をしてしまっても土壌に養分が蓄えられているため、すぐに草が生え、少しずつ木が生え、森になるスピードが速い。
一方で、生物多様性が最も高い熱帯雨林(正式には熱帯多雨林)は、意外にも土壌の発達が良くない。熱帯雨林は、分解者も非常に多く、また気温も高いので分解速度が非常に速く、落葉や腐植の層がほとんどない。また、養分は土壌に蓄積されるのではなく、速い速度で生物間を循環している。そのため土壌は浅く、まとまった面積の森林を伐採してしまうと、多雨であるため、たちまち土壌が流され、砂漠化を引き起こすきっかけにもなってしまう。
それに引き替え、日本の自然はなんと恵まれていることか。日本の森林のほとんどは、人手が加わっており、それでも比較的発達した森林が形成されている。関西分室のご近所の六甲山は過去にハゲ山になっているにも関わらず、今では森林になっている。
絶妙な温度と絶妙な湿度によってもたらされている日本の自然。私たち日本人にとって普通にある周りの環境は、実はすばらしい偶然の上に成り立っている。もっと、日本の自然に感謝しなくてはいけないかもしれない。
とまぁ、草ボウボウになった軽トラをみて、柄にもなく深い感慨にふけり、熱帯雨林にまで思いを馳せてしまった。
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