NO.121 柵によるシカの惨死
2010年08月18日
姜 兆文
ニホンジカ(以下はシカとする)の白骨(頭が柵に絡まって死亡、写真1)、別のシカの白骨(角が柵に絡まって死亡、写真2)、最後にシカの死体(角が柵に絡まって死亡、皮はまだ新鮮で、肉の殆どは食べられていた、写真3)。これは私がシカの調査をするため、ある日、山に設置された柵沿いに歩いた時撮影した「シカ」の写真である。皆さんはこの写真を見たら何を考えるでしょうか。私は悲惨な世界だと思った。柵内植林の樹齢により、その柵は20年前に植林した時、幼樹を保護するため設置され、現在まったく防護機能がなくなったと思われる。
柵の材料、織り方と網方眼サイズによってシカの角や頭の絡まり方が異なる。絡まったシカが自力で柵から自分を解き放つことができない時、餓死するしかない。また、縦横に設置され機能を失った、或いは防護の必要性がなくなった地域の柵(ゴミ柵)は、森林動物たちの行動の妨げになり、また生態系の障害物にもなると考えられる。シカの個体数急増による森林被害が深刻になり、シカの被害を抑えるため、対策の選択肢の一つとして、防除柵の設置は理解できる。しかし、シカの福祉を考えて、写真のような悲惨な状況にならないように、また、ゴミ柵が健全な森林生態系の障害物にならないように、防除柵の設置責任者が強い責任を持って、ゴミ柵の片付け、或いは撤去をしなければならないと考えている。
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