研究員によるフォトブログ

No.354 葛とみかん

2020年03月24日

三木清雅

山の中腹にそこここに作られたみかん畑、そんなみかん産地愛媛県の山でサルを探すため、遠目から山を観察する。音に耳を澄ませ、風とは違う、鳥とは違う動きを探る。ふと、山の異様さに目が留まる。林の一角が絨毯のようなものに覆われているのだ。双眼鏡で確認すると、それは葛の絨毯であった。耕作放棄されたみかん畑は今では葛で覆われ、周りの杉林まで飲み込む勢いで成長していた。

この風景を目の当たりにして、同じくみかんの産地和歌山県の方に以前聞いた話を思い出した。和歌山県でも同じように放棄されたみかん畑は数年で葛に覆われ、みかんの木は日光を遮られ、枯れて自然と山に戻ると言っていた。しかし、近年その方の住んでいる地域では葛を積極的に採食するニホンジカやイノシシの生息数が増加し、葛が食圧によって畑を覆うほど育たず、放棄されたみかん畑は自生し続けることが多いそうだ。放棄されたみかん畑のみかんたちは収穫されていた頃と相変わらず2月、3月まで実を付け、サルなどの野生動物にとって厳しい冬を乗り越える格好の栄養源となっている。みかんを採食し冬を越せる動物たちは、死亡率の低下や繁殖率の増加につながることだろう。葛がこのような影響を与えていることを私はつい最近知った。ところ変われば事情も変わり、様々な背景や要因が見えてくることは面白く、その状況に応じた対策を講じることの必要性を改めて感じた瞬間であった。

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