研究員によるフォトブログ

NO.87 親子の紋章

2010年04月21日

片山 敦司
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 2009年の秋はドングリが豊作で、関西圏でのツキノワグマ出没は全体的に少なかった。豊作年には栄養を蓄えたお母さんグマの妊娠率が高まると言われている。2010年は親子連れを見る機会が増えるかも知れない。
 ところで、学習放獣などのために現場に行くと、一つの檻に親子(母子)が仲良く捕獲されていることがある。どちらか片方しか捕獲されていない場合は、人とクマの双方の安全上の問題があり、捕獲対応にものすごく神経を使う。しかし、同時捕獲の場合は作業量こそ多くはなるが、親子を一緒に放獣できるという安心感がある。
 親子が捕まった時、密かに気にしていることがある。それは「親子のツキノワの形は似ているのだろうか?」ということ。麻酔をかけた後、ツキノワの形がそっくりな親子の並んだ寝姿を見ると自然と頬が緩んでしまう。個人的には「親子のツキノワは瓜二つであって欲しい」という勝手な願いがあるのだ。
 実際のところ親子のツキノワは似ているだろうか?と思い、同時捕獲のツキノワの写真をいくつか拾い出して比べてみた。
 すると・・・残念なことに、ほとんどの場合似ていないことがわかった。確かにそっくりなV字型をしたものもあるが、お母さんに立派な白斑があっても子供は小さな三日月であったり、子供はブーメラン型でお母さんは小さな斑点など、親子が似ているケースは数少なかった。
 お父さんの血が混じっているのだから仕方のないことなのだが、ちょっとがっかりな話・・・でありました。
追記:ツキノワグマの胸部に見られる白斑(ツキノワ)の形状は、個体識別のためのマークの一つとしてできるだけ記録するようにしている。白斑の形状に何らかの特性が見られるかはいつか調べてみたい。

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