No.37 小さな来訪者たち
2006年09月08日
加藤 洋
ツキノワグマのヘアトラップは、ハチミツでクマを誘き寄せ、有刺鉄線でクマの体毛を絡め取るというものだが、クマ以外にも様々な生物が訪れる。
ハチミツに集まってきたハエを捕食するクモ。さらに、虫たちを食べに来たのだろうか、カエルもいる。小さな食物連鎖が出来上がっている。クワガタがハチミツをすすりに来ている事があるが、彼らはハチミツを囲うネットを破ってしまうようだ。困った奴だと思う反面、何だかワクワクしてしまう。…だが、よくよく観察すると、口元がかなりグロテスク。小さい頃は素手で捕まえて喜んでいたのに、今は見ているだけで十分である。
ハチミツに誘引されて来てしまった者もいれば、何故こんな所にいるのか不思議な者もいる。…セミが刺さっている。見事に眉間を貫かれたヒグラシ。毛を探しているときは、有刺鉄線を間近で凝視しているので、こんな所にいられると急に視界に入ってきて、不覚にも驚いてしまう。このヒグラシには眉間以外に傷が見当たらず、きれいなものだった。モズとは考え難いか。想像を掻き立てられる。自らトゲに突っ込んだというのも、有り得ない話ではない。林内で高速セミアタックをくらう事もしばしば。地面に落ちてギャーギャーわめいている彼らをよく見かける。飛び立った先に、有刺鉄線が待っていたのだろうか。
このトラップはクマの毛を取る事が目的であり、勿論クマの毛が取れている事が一番の喜びである。クマの毛みたいなモジャモジャ毛虫に一瞬のヌカ喜びを与えられる事もあるが、そんな小さな来訪者たちとの出会いも、この調査の楽しみの一つである。
※ただし、スズメバチだけはお断りです。
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