研究員によるフォトブログ

No.278 社有林というもの

2017年08月18日

岸本真弓

山を歩いていると、ごくたまに「社有林」の看板を見つける(写真1、写真2)。今回紹介したのはいずれも製紙会社の社有林の看板である。
写真1の会社をインターネットで調べてみると、「社有林の保全を通じて地球環境と地域社会への貢献を図っています」というキャッチフレーズが飛び込んでくる。この会社は紀伊半島を中心に社有林を擁している。もともとは他の製紙会社と同じく、第二次世界大戦の戦中戦後に原料素材の確保のため社有林を確保してきたようだが、その後の時代の変化に応じて、現在ではスギ・ヒノキの人工林経営と広葉樹天然林の再生林の保全管理が主体となっているようだ。また、紀伊半島という地域性から、社有林の一部が熊野古道関係の世界遺産に含まれ、景観や環境保全に配慮した森林管理を進めているという。
写真2は日本最大の社有林を有する会社である。写真1の会社と同じように最初は製紙原料の確保のための社有林であったが、現在は製材原木の育成と環境保全への取り組みへ変遷を遂げている。HPを見ると、社有林の公益的機能の評価額は年間5,300億円であり、社有林の41%を占める人工林の間伐などの費用には約5億円を投じているとある。
おそらくどの社有林も独立採算では到底成り立っていないのであろう。しかし、高邁な理念のもと、会社全体で環境保全に取り組んでいるということなのだと思う。そのような民間企業の善意の森にも悪意はないがシカが入り込み、シカ対策も必要不可欠な業務になってきている。関西分室に所属する私は地域の民間企業が社有林をどのようにシカから守ってきているかの情報を残念ながら持ち合わせていないが、北海道では林業事業体として深く関わってきていると聞く。2年前から受託している林野庁の鳥獣被害対策コーディネーター等育成研修会事業(http://wmo.co.jp/kenshu29/)では、そのような林業事業体の重要な役割が示されている。企業であれば、効率的で生産性の高い林業と環境保全について、将来的な展望をより深く検討し見据えているであろう。そういうバックボーンがあってのシカ対策はどのようにすべきか、一般的な林地でのシカ対策ともしかして違うところがあるのではないか、一度お話をしてみたいと思うのである。

 

写真1

 

写真2

 

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