No.148 仕事の道具(その6) 吹矢筒と吹矢の力学(および美学)
2011年07月26日
片山 敦司
我々が使う道具の中で吹矢筒(blow pipe)ほどシンプルなものはない。何のことはない、ただのアルミパイプである。
しかし、侮ってはならない。blower(吹矢を吹く人)-darts(吹矢)と一体になった時、吹矢筒は高性能の捕獲器と化すのである。
スポーツ吹矢で使用される吹矢は初速130km/hとされる。マレーシアの狩猟民族は約2mの筒を使い、30m先の獲物を倒すという。
吹矢筒が長いと射出力が高まる。筒の長さ(L)、呼気による圧力(F)、吹矢の重さ(m)・速度(v)にはFL=1/2 mv^2の関係が成り立つそうだ。この式では筒と矢の摩擦や空気抵抗が考慮されていないが、単純に計算すると1mの筒を2mにすると、飛距離は√2を乗じた分増すことになる。筒が長い分、推進力を受け続けるので吹矢が与えられる運動エネルギーはそれだけ大きくなるためだ。
余談であるが、腹式呼吸を取り入れて健康によいとされる「スポーツ吹矢」にはスポーツならではの基本動作《1.的に向かって礼をする→2.構える→3.筒を上げ→4.息を吐く→ 5.息を吸う→6.吹く→7.息を調える→8.礼をする》がある。現場勝負となる我々には「礼」の心がない。これからは気持ちの上だけでも「礼」は欠かさないようにしよう。
参考URL:http://www.fukiya.net/
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