No.492 廃道で長い眠りにつく「獅子」
2026年06月05日
林航平
その場所は、携帯の電波すら届かない深い山奥です。 本来の目的は、動物たちの通り道に仕掛けたセンサーカメラの回収でした。
人が立ち入らなくなり、地図からも消えかけた「廃道」。 緑に侵食されたその道を歩いていると、木漏れ日の中に、本来そこにあるはずのない鉄の塊が鎮座していました。

苔むしたボディ、砕けたガラス。しかし、そのフロントグリルには、色褪せながらも誇らしげな「六連星(むつらぼし)」が残されています。

気になってGeminiに聞いてみたところ、これは「2代目 スバル・レオーネ」。昭和の時代、悪路を走破するタフな車として愛された名車でした。

かつてはエンジンを轟かせ、この道を力強く駆け抜けていたのでしょう。 しかし今は、役目を終え、静かに森の一部になろうとしています。
なぜここに置き去りにされたのか、持ち主はどんな人だったのか。 真相は藪の中ですが、錆びついたボディに降り注ぐ木漏れ日は、まるで彼を労っているようにも見えました。
都会の喧騒から隔絶された静寂の森。 そこには、昭和から時が止まったままの、美しくも切ない風景が広がっていました。

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