No.45 動物たちの表情
2008年04月10日
加藤 洋
野生動物の生態調査に欠かせないことの一つに、電波発信機によるラジオテレメトリー調査がある。電波発信機を装着するためには、動物を生きたまま不動化(麻酔)する必要がある。また、我々はツキノワグマの放獣業務も請け負っているため、ワナに捕獲されたクマに麻酔をかけることがある。
麻酔をかけられ、我々の手中に落ちた野生動物。そのとき、野生下では決してみることの出来ない彼らの表情を見ることができる。普段、動物の不動化に用いている薬品は、動物の中枢神経を麻痺させ、意識・痛覚の消失を得ることができる薬品である。その成分の中には、解離性麻酔薬という一種の麻薬も含まれている。麻酔下の彼らの表情は、まるで幸せの国に旅立っているかのような表情に包まれている。
最も表情豊かに感じる動物はサルだ。野生を満喫している彼らの面影はここにはない。どんな夢を見ているのだろう。人間に捕まる恐怖か、これから襲撃する畑のことだろうか。いずれにせよ彼らには元気に野生に帰ってもらって、我々に貴重な情報を提供してくれることを願う。
年度末、報告書の作成に追われながらも、彼らの表情からはひとときの安らぎを頂いている。
注)ここに掲載されている写真の動物たちは、生きております。
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