No.4 択捉島調査雑記<その1.衛生害虫に気をつけろ>
片山敦司
公衆衛生の世界で人にとっておじゃまな虫は「衛生害虫」と言う。この1年、蚊やハエはもちろん、スズメバチやダニにお世話になったりしてちょっと衛生害虫対策に関心が向いた。今回はフィールドでの防虫対策のお話。
この6月、北方領土の択捉島に行く機会を得た。自然度の高い土地だからさぞかし・・・と思いながら択捉島の上陸経験者の手記を読むと初夏は島の内陸部でブユが柱をなしているという。ヒグマも虫があまりに多いので風通しのよい海岸部に移動しているのだというから並じゃない。準備中の調査団の中でもそのことが話題に出て、防虫対策の蘊蓄(うんちく)が傾けられたりした。
最も剛胆な意見は、「まず、シーズンのはじめに虫に刺されよ。それで免疫が獲得されるので後は刺されてもかゆいのを我慢すれば悪化しない」というもの。そのほか、インターネットで調べたり、色々な人の意見を聞くと意見は錯綜している。「防虫スプレーを買うならば主成分であるディートの含有量の多いものを買うべし」、「主成分が香料となっているスプレーは眉唾ものである」、「いや、ディートは発ガン性があって良くない」、「香料による自然な防虫効果が一番である」、「防虫ネットは鬱陶しいけど効果あり」等々。
結局、私は「虫よけ成分ディートが12%配合。忌避剤では日本で初めて『医薬品』として認められた」というキャッチコピーに負けて某社防虫スプレーを買った。ついでに頭からすっぽりかぶる防虫ネットも買った。さて、その効果やいかに?・・・
実は、思ったほど虫はいなくて効果はわからなかった。防虫ネットもかぶっていると鬱陶しいのでほとんど使わなかった。ロシア人は「ベラなんとか(ベラノーシカ?)という足の白いブユには気をつけろ」とロシア語で言っていたらしいが、幸い私は、その「ベラ・・・」には刺されることはなかった。同じチームの中で額を何かの虫に刺されて「おいわさん」状態になった人がいたが、それが「べラ・・・」の洗礼だったのかも知れない。
防虫対策もケース・バイ・ケース。対策もハイレベルになればなるほど別のところで障碍が生じるものだ。でも「衛生害虫」を軽んじることなかれ。連中の中には恐い病気の中間宿主だっているのだから。虫の多い土地に行くときは刺されないための準備をしっかりしていこう。
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