No.23 サルを利用する(?)シカ
2004年05月31日
岸本 真弓
5月20日、京都市と滋賀県大津市の境、比叡山延暦寺。標高700m、心地よいひんやりとした冷気が漂う。ややガスがあり、木々の緑がしっとり美しい。
駐車場の脇に植えられた桜の、ほんのり赤く染めた頬を寄せ合うかのごとく実が何十組、何百組と、葉に見え隠れする。
カリッ、コリッ、コリコリッ。あちこちで音がする。サルがその実を食べているのだ。そこへシカの親子がやってきた。お母さんと今年1歳になったオスジカ。シカの親子は桜の葉を食べながら駐車場の縁を移動。徐々にサルに近づく。サルは気にしている風でない。
サルがサクランボを食べている木の下にシカがきた。シカは二本足で立ち、枝先の葉を食べようとする。なかなか届かない。枝に乗っていたサルが少し位置を変えた。枝が下がる。ラッキー! シカはサルのおかげで葉をたくさん食べることができました。
サルとシカのこのような関係は、実は珍しいことではありません。中川尚史さんの「サルの食卓-採食生態学入門」(平凡社1994年)にも、サルが樹上で採食していると下にシカが集まってくる事例が書かれています。
中川さんが紹介されているインドのハヌマンラングールとアキシスジカの例(Newton,1989)では、シカはサルが木に上って採食を始めると積極的に集まってくること、シカの警戒声にサルが助けられる回数はその逆よりも少ないことから、どうやらシカは一方的にサルから恩恵を受けているとのことです。
比叡山のサルとシカの関係はわかりませんが、普段は別々に見慣れたサルとシカ、静かな、けれども深い関係を垣間見ることができとても嬉しく思いました。
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