研究員によるフォトブログ

No.31 糞採集紀行

2005年10月18日

森光 由樹
 長野県に生息しているニホンザルのミトコンドリアDNAを分析したところ、今まで5つのタイプが見つかりました。しかし、採取したDNAサンプルは捕獲個体を中心に採取したものだけでした。
捕獲の難しい地域に生息しているサルのDNA情報は未だに不明です。そこでDNAサンプルが不足している地域、北アルプス後立山、針ノ木岳周辺を探索してサルの糞拾いに行ってきました。糞にはその個体の細胞が混じっています。DNAを抽出し分析することが可能です。
 長野県大町市JR信濃大町駅から車で約30分で扇沢に到着します。扇沢は富山県黒部ダムへのアプローチ、トローリーバスの発着場所でも有名なところです。トローリーバスの発着駅とは反対の場所に針ノ木岳や鹿島槍岳への登山口があります。扇沢から登山を開始し約4時間で稜線に出ます。種池山荘に到着です。稜線では夏の花は見頃を既に終えて秋の花満開です。オヤマリンドウ、アキノキリンソウ、クロトウヒレン、ヤマハハコ、トリカブト、ミヤマシシウド、トウヤクリンドウ、ミヤマコウゾリナが花をさかせていました。
 この周辺には、夏の期間だけ高山帯に登って来て生活するサル達がいます。
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 ハイ松帯の合間にのびる登山道を歩きながらサルの糞を探しました。種池山荘から新越山荘、そして針木岳まで足をのばして糞を集めました。合計で約50サンプルの採取に成功しました。採取した試料の分析結果は中部山岳地帯における地域個体群成立に関わる歴史的な背景を紐解くことができるかもしれません。
また、北アルプス稜線を境界に生息している富山側の群れと交流があるかどうかについても新知見を得ることができるかもしれません。今後の分析結果をあれこれと思い描きながら、秋迫る北アルプスを下りました。

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