研究員によるフォトブログ

No.30 クマの捕獲は同調(synchronize)する?

2005年01月18日

片山 敦司
 2004年の秋はクマ騒動で大変だった。近畿圏で学習放獣や錯誤捕獲の対応を請け負っているのだが、私の所属する関西分室(4名)で扱ったクマの頭数は100を超えた。
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 単にクマが出たと騒いだ件数ではない。クマに麻酔をかけ、安全な場所で放獣するまでの作業である。「体重が100kgを越えるクマが直径4mmのワイヤー(くくりわな)に掛かって暴れている。ワイヤーが切れそうです」。「建物にクマが入り込んだのでシャッターを下ろして閉じこめた。なんとかして」。そんな通報が続くと、鈍感な私でも少し頭がくらくらした。
 ばたばたと走り回りながらも動物の不思議を感じさせることがいくつかあった。その一つがクマの捕獲される時期と地域的なタイミングの一致である。
 私たち人間も、気温が低くなると大部分の人が同じように寒いと思って厚着をしたり、コタツにもぐり込んだりする。そういう行動はみんなが示し合わすわけでもなく自然におこるものだ。クマにもそのような行動の同調があるはずなのだが、捕獲の発生でその気配が感じられた。
 ある町でクマの出没が続き、対策のための罠をかけている。しかし、クマはなかなか捕まらない。ある日ようやくクマが捕獲される。それも別々の地点で同時に2頭も。そして次の日も同じ町で1頭。その後は捕獲情報はぱったりと途絶える。これと似たようなことが各地で散発した。
 何が同調の要因なのか。解明は今後の分析に待たれるところだが、同調は、我々にとって「嬉し迷惑(こんな日本語ないか?)」な事態であった。
 捕獲対応をおこなう地域が扇形に広がっているとすると、関西分室は扇の要(かなめ)に位置する。現場(扇の先端)までは車で2時間から3時間。往復だけで半日仕事である。1作業班が1日にこなせる件数は時間的に3件が限界。扇の左端から右端まで移動する必要性が加わると、時間的に2件もこなせなくなる。我々としては同時多発的な捕獲は脅威であったが、近接する地域での多発例に救われた。
 でも、1件1件が神経をすり減らす作業。行政の担当の皆さんも大変だったと思うが、出動要請があると「××してよお~」と絶叫したくなる。そんな心の叫びが2回以上響きわったった日は23回あった。
  
[注釈 ××して:職務上言ってはいけない言葉]

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