研究員によるフォトブログ

No.257 三角点探訪~番外編~ 恩賜林界標

2016年08月08日

岸本 真弓
山の中で変わった標柱を見つけた。柱の側面にの旧字体なのか「恩」という字が読める。場所は山梨県、もしやこれは恩賜林の標柱?
会社に戻りインターネットを繰るとでてきた。恩賜林の境界測量で設置されたのがこの標柱のようだ。
皇室の所有地(御料地)を管理するため1885年(明治18年)に宮内省に設置された「御料局(御枡局)」の設置した三角点は御枡局三角點と言われることを前に紹介した。
江戸時代、山は村落が管理していたが、明治になりほとんどの山は国のものとなった。その後政治的な理由により山林は皇室財産である御料林となる。国の施策等によって管理が十分に行われなかった山は荒廃し、山梨県では明治時代後半に大水害が頻発してしまう。このことを憂えた明治天皇が山梨県内の御料林のほとんどを県に御下賜され、これが恩賜林として県有林の基となった。恩賜林は山梨県土の約1/3、森林面積の約半分を占める。
水害を引き起こす山林の荒廃は、入会山として地元住民が守っていた山が国のものとなり、山での生業を禁じられたが故に手入れが行き届かなくなったこと、時代の殖産興業政策により無計画に林木が収奪されたことなどが原因であったらしい。山の荒廃は防災の観点から決して見逃すことのできない事態である。森林の公益的価値は計り知れない。人はそれに守られているということをもっと強く意識すべきであり、そこへの投資は惜しむべきでないだろう。
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