研究員によるフォトブログ

No.40 苦しい時の空(飛行機)頼み

2006年10月25日

片山 敦司
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 ツキノワグマは移動能力が大きいので,標識個体が地上での追跡で行方不明となることが稀ではない.車で侵入できるありとあらゆる林道を探索し,ついには歩いて山に登り,アンテナを振っても電波が受信されなかった時の虚脱感はあまり経験したくないものだ.
 そんな時に,航空機による探索が可能になると,千載一遇,地獄に仏,渡りに船の思いがする.これまでに,ヘリコプターやセスナ機での探索を経験したが,どの調査でも不明個体を発見するなど良好な結果を得ている.コストは高いが,それなりのリターンはある調査なのである.
 航空機を利用する上で,ネックとなるのが天候の影響を受けやすいということだ.せっかく飛行場まで行っても,「この天候では無理ですね」と飛行中止の宣告を受けると新たな虚脱感を感じる羽目になる.また,飛び立った先で気流の乱れが大きいと,気持ちの方も大きく乱れてしまう.数時間におよぶ探索飛行中,エンジンの爆音の中,標識個体からの受信音を片鱗たりとも聞き漏らすまいと緊張の糸は張りつめたままである.そんな時にガクンと機体が落ちると,立ち直るのに一瞬の間が必要である.でも「ガクン」「ガクン」が繰り返されるとそのうち慣れてくるから人間の体はたいしたものだ.雲を避けて旋回する際などに緊張して「ガクン」を待っているのに,スムーズに機体が流れると少し物足りなくなる.
 首尾良く目的が達成され,帰路につく時には異常な高揚感を感じる.市街地上空では,ケシ粒ほどの人や車を見下ろし,「天上天下唯我独尊」などとつぶやいてふんぞりかえっている.でも意気揚々と地上に降りたところで航空機会社から請求書を見せられ,現実というものに目が覚めるのである.

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