研究員によるフォトブログ

No. 212 日本の鳥といえば

2015年01月26日

岸本 真弓
今も一緒に調査に行くTさんと初めて会ったのは1990年、初夏の奈良だった。山を背にあぜ道に座っているとジッジッと低く小さな声がする。「日本人に最もなじみ深い鳥の声だ」と教えてもらった。そう、ウグイスの地鳴きである。
 今年の晩夏、奈良の山を歩いた。いつもは盛秋に歩くので、鳥の声もわかる人が聞けば違いは歴然なのだろうなあ、などと思っていたら、ギジギジギジギジギジと聞き慣れない騒ぎ声が迫ってきた。それも群れだ。いったい何なのだと思い、双眼鏡で追うと、ソウシチョウだった。
 ソウシチョウを初めて見たのは1995年、和歌山県の護摩壇山だった。やはり紀伊半島に多いのかな、などとのんきに思い出していたが、調べてみて驚いた。現在山形県と北関東から九州までのほとんどすべての都府県で分布が確認されている。ソウシチョウは特定外来種に指定され、生態学会の定めた日本の侵略的外来種ワースト100の1種である。
 伝統的化粧製品の「ウグイスのふん」の代わりに集団飼育しやすいソウシチョウの糞が用いられていた時代もあったらしい。けたたましい声と派手な姿。日本の山には似合わない。日本人に最もなじみ深い鳥は、いつまでもウグイスであって欲しい。
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