研究員によるフォトブログ

No.24 落とし穴

2004年08月03日

岡野 美佐夫
 数年前、関東のとある県で調査をしていたとき、畑の縁に落とし穴を見つけた。子どもが空き地や砂浜で作るような無邪気でお粗末なものではなく、小型ユンボか何かを使った本格的なもの。大きさは2畳ほどで深さも2m前後。機械で掘った後、回りは間伐材を使って土留めし、その上にトタン板を張って足がかりをなくしてある。
上にビニールシートをかぶせ落ち葉を敷き詰めてカムフラージュした、正真正銘の落とし穴だ。この落とし穴のところを除き、畑の周囲は網で囲われているので、中に侵入しようとする獣はここを通らないとならない。用意周到である。
どんな動物を狙ったものだろうかと考えながら見ると、落とし穴の上に横棒が渡してあり、そこには滑車が吊り下げられている。大型の獣を運び出すためだろう。キツネ、タヌキ、サルならこんな装置を使う必要はないので、イノシシやシカを狙ったものだろうか。
中をのぞいてみたがはっきりわかる獣の足跡は見つからなかった。実際に捕まった動物はいなかったのか、痕跡が雨で洗われて消えただけなのか判然としなかった。
 針金を使ったくくりわなやトラバサミなど、これまでもさまざまな違法わなを見てきたが、ここまで手間をかけ用意周到に作られたものは初めて見た。わざわざ落とし穴を造らなくてもその部分も網で囲めば畑への侵入は防げるはずだが、あえてそうせず落とし穴を作ったところに被害の深刻さ、作者(畑の持ち主と考えて間違いないでしょう)の断固たる報復の意志が現れている。
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著者注:「落とし穴」は危険なため野生動物の捕獲のために用いてはいけない方法に指定されています。

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