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Field Note 公開記事

No.103 サルたちの日常

2009年07月発行

サルたちの日常   川村 輝(WMO)    私はニホンザルの調査に関わることが多く、サルたちの様々な姿を垣間見ることができる。思わず人間の子供の行動に重なって見えてしまうものや、なぜそんな?と思うようなものなど様々だ。その中でも記憶に残る行動をいくつか紹介しようと思う。被害拡大など問題視されることの多いサルだが、ここでは少しサルたちと目線を近くしてサル達から見える景色を感じていただけたらと思う。 ●サル達の食べ物あれこれ ・蛾 道端に大きな蛾がとまっている。羽を広げると15cmぐらいだろうか。そこへ1頭…

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No102 同じ穴のムジナ?

2009年04月発行

同じ穴のムジナ?   岡野 美佐夫(WMO)   Wikipediaでムジナ(狢)を引くと、「主にアナグマのことを指す。地方によってはタヌキやハクビシンを指したり、これらの種をはっきり区別することなくまとめて指している場合もある。」と出る。アナグマとタヌキをまとめて(あるいは混同して)ムジナと呼ぶのは知っていたが、ハクビシンもその仲間に入れられていたとは知らなかった。Wikipediaに出ているということは一般に広く認められていることがらなのだろうか。ハクビシンは外来種と考えるのが普通であるが、江戸時代に…

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No.101クマ類の出没メカニズムに関する国際ワークショップの参加報告

2009年01月発行

クマ類の出没メカニズムに関する国際ワークショップの参加報告   湯浅 卓(WMO)      昨年11月、紅葉シーズン真っ只中で国内外からの観光客でごった返す京都にて、(独)森林総合研究所の主催により、クマ類の出没メカニズムに関する国際ワークショップが2日間に渡って開催された。このワークショップは、2004年や2006年に日本各地で見られた、クマ類の里(人間の居住地)への大量出没を受けて、出没のメカニズムや非致死的な被害の防止法に関する研究推進のための研究交流・研究成果の報告を目的としていた。また、日本で…

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No.100 Wildlife Managementの25年

2008年10月発行

Wildlife Managementの25年 濱崎 伸一郎(WMO) 25年前の1983年、私は東京農工大学の環境保護学科から獣医学科に再入学し、3年目の大学生活を迎えていた。環境保護学科在籍時には丸山直樹先生の研究室に出入りし、下っ端調査員として栃木県日光のクマやシカの調査を手伝っていたが、その現場で調査をリードしていたのが現WMO代表の羽澄俊裕氏であり、クマやシカの捕獲時にどこからともなく現れ、見事な麻酔使いの技を披露していたのが創立者の一人である東英生氏であった。 1983年に野生動物保護管理事務所(WMO…

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No.100WMOのあゆみ

2008年10月発行

WMOのあゆみ WMO代表 羽澄 俊裕 おかげさまで、私どもの機関誌「フィールドノート」が100号を迎えることになりました。25年という長きにわたり支えてくださった読者の皆様には、心から御礼申し上げます。この間、日本の社会情勢もずいぶんと様変わりして、野生動物の保護のありようについても大きく異なってまいりました。私どもWMOもそうした時代の変化に柔軟に対応してきましたが、そのときどきに何を思い、ここまで歩んできたのか、反省をふまえつつ振り返り、新たな出発の機会としたいと思います。 はじまり いまから25年前、私と初…

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No.99 青海・チベット高原でのチルーの生態調査参加雑記

2008年07月発行

青海・チベット高原でのチルーの生態調査参加雑記 姜 兆文(WMO)  2007年8月17日から8月28日まで、念願の中国青海・チベット高原でチルー(Chiru、Pontholops hodgsoni)の調査に参加した。チルーは中国特有の偶蹄目ウシ科の動物で国家一級保護動物に指定され、ワシントン条約でも絶滅危惧種として保護されている。また、北京オリンピックのマスコットのモチーフにもなっている。標高4000m級の高原地域で生息するため、詳しい生態や生息数はわからない。オスの角は真直ぐ空に指す、長さは70cmに達する。1…

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No.98クマ類の錯誤捕獲の防止の取り組みとその評価

2008年04月発行

クマ類の錯誤捕獲の防止の取り組みとその評価 片山 敦司(WMO) 平成19年1月29日環境省令第3号により、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則等の改正が示された。改正内容には『くくりわな』の使用に関する制限が盛り込まれた。すなわち、くくりわなを用いる場合、輪の直径が12cmを超えるもの、締付け防止金具が装着されていないものの使用が禁じられ、イノシシ及びニホンジカの捕獲を行う目的の場合は、よりもどしが装着されていないもの又はワイヤーの直径が4mm未満であるものは使用が禁止された。本施行規則は平成19年4月…

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No.97ネズミに思いをはせよう!

2008年01月発行

ネズミに思いをはせよう! 山元 得江(WMO)  明けましておめでとうございます。今年は「子年」ですね。年男、年女の方もいらっしゃると思います。ネズミは私たちの生活に密着しているものから、あまり関与しないものまで幅広く存在します。ネズミが人間にとって身近な存在であったのは昔からのようで、このことは古来より伝わる言い伝えや風習、諺など様々な分野でネズミが登場することからも伺えます。一方で、私たちが普段は目にできないネズミ、森林棲の野ネズミの生態はまだまだ解明されていないことがたくさんあります。今回は、今年の十二支であ…

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No.96 NZの空港検疫を体験して

2007年10月発行

NEW ZEALANDの空港検疫を体験して 佐伯 真美(WMO)   入社前の話になりますが、昨年3月にニュージーランドに行きました。今回はその時、体験したニュージーランド(以下、NZ)の空港検疫について書かせていただこうと思います。  NZという国名を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?先住民のマオリ族?飛べない鳥のキウィ?NZの国技であるラグビー?映画「ラストサムライ」や「ロード・オブ・ザ・リング」などの撮影地?世界一の散歩道と言われるミルフォード・トラック? 私がNZに行きたい!と思った理由の1つは、NZの…

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No.95 カワウを訪ねて竹生島 (加藤 洋)

2007年07月発行

カワウを訪ねて竹生島   加藤 洋(WMO) かつて「深緑 竹生島の沈影」といわれた島。 滋賀県琵琶湖、ここにはカワウによって大きく変化していく島がある。 竹生島は、琵琶湖の北部に位置する周囲2km、面積0.14km2の島である。全島が花崗岩の一枚岩からなり、標高197.6mの急峻な地形をしている。この島には、歴史ある建物がいくつもある。島の斜面、勾配の急な165段の石階段の上に建造された宝厳寺は、神亀元年(724年)、聖武天皇により使わされた僧・行基により建立されたと言われる。都久夫須麻(つくぶすま)神…

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No.94 2006年クマ大量出没が語るもの

2007年04月発行

2006年クマ大量出没が語るもの 片山 敦司(WMO)  2007年2月9日~11日、日本クマネットワーク(JBN)が主催する「緊急クマワークショップ」と「緊急クマシンポジウム」が東京で開催された。前者はJBN会員と行政担当者など、クマ問題の前線で格闘している人々が、2006年度のクマ大量出没の原因、対策、課題等を総括し、今後のクマ類の保護管理の方向性をJBNからの提言という形でまとめあげるというもの。後者は、一般向けのシンポジウムで、「人里に出没したクマをどうするのか?・人里に出没させないための方策は?-2006…

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No.93 イノシシの牙

2007年01月発行

イノシシの牙 岸本 真弓(WMO) 今年はイノシシ年。 いろいろなイノシシの年賀状をいただいた。かわいいイノシシ、リアルなイノシシ、勇ましいイノシシ。ブタとの違いは粗い毛と、鋭くむいた牙のようだ。それが一般の人が抱くイノシシの姿なんだろう。 だが、実際にはイノシシの牙はオスの成獣でしか目立たない(写真1,2)。それにサイの角のように前に突き出ているのではなく、後ろに湾曲している。正確に言うと、前に弧を描くように湾曲し、先端は斜め後ろを向いている。これは下の犬歯で、不思議なのは上の犬歯も同じようにカーブしていることだ…

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No.92 秋の山、クマの暮らしを垣間みた

2006年10月発行

秋の山、クマの暮らしを垣間みた 瀧井 暁子(WMO)    フィールドノートの原稿の締切りがとうに過ぎてしまった(編集者さん、ごめんなさい)。その頃、私はY県境付近の山の中でシカの糞塊調査を行っていた。 この調査は、単独で山の尾根を5~6km歩きながらシカの糞を記録するものである。登山道もあれば、道のまったくない尾根もある。調査範囲は、標高約900~2000mであり、スギ・ヒノキ・カラマツなどの植林地のほか、標高1600m付近まではブナ・ミズナラ林が多く、標高1600m以上は、主にコメツガ林となっている。…

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No.91 うんこのだし方、いかし方

2006年07月発行

うんこのだし方、いかし方 岸本 真弓(WMO) 昨年秋、例年通り訪れたのシカ糞塊密度調査対象地である福井県、兵庫県、滋賀県の山の実りは見事だった。標高の高いところでは、ブナ拾いに熱中した。しぶみやえぐみをとことん敬遠しているはずのヒトでさえ、おいしいと感じるブナの実を、山の動物たちが大好きなのは当たり前、私なんぞに拾われては怒るだろうなと、ちょっとビクビクしながら拾い集めた。一緒に調査に行ったY山さんは、果樹園状態のアケビを発見。私もおすそわけにあずかった。このおすそわけにヒトは舌鼓を打ったわけだが、タヌキは山の実…

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No.90 続・仙台のニホンザル

2006年04月発行

 続・仙台のニホンザル 清野 紘典(WMO) 2006年3月10日・11日、京都大学霊長類研究所において共同利用研究会「野生霊長類の保全生物学」と題した研究会が開催されました。学生時代に共同利用研究にお世話になっていたこともあり、研究発表を行いました。 発表の内容は、仙台市に生息する野生ニホンザル群の生態についてでしたが、今回そのすべてを紹介するには限りがありますので、『Field Note No.75』で森光(WMO)によって報告されている「仙台のニホンザル」(p7-11)の続編として、仙台のサルとそれらを取り巻…

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No.89 『人慣れグマ』との正しい「付き合いかた」とは?

2006年01月発行

『人慣れグマ』との正しい「付き合いかた」とは? ―クマの夏2005― 泉山 茂之(WMO) 毎年、夏は休む間もなくクマと向き合う日々が続く。北アルプス南部の上高地周辺では、ホテルや山小屋でのゴミ管理が行き届くようになり、生ゴミに餌付いて問題を起こすクマはほとんどいなくなった。 ところが、2002年頃から、遊歩道の周辺で日中からふらふら徘徊する仔グマが話題になり始めた。親グマから離れて間もない仔グマが連日目撃され、観光客からは携帯シャッターの嵐で、人気の的だったそうだ。 確かに、仔グマはかわいいかも知れない。このよう…

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No.88 ヒガンバナは不吉な花なんだろうか・・・・

2005年10月発行

ヒガンバナは不吉な花なんだろうか・・・・ 横山 典子(WMO)   暑さ、寒さも彼岸までといわれますが、すっかり涼しくなり、秋らしくなってきました。 先日、どこかに出かける途中でヒガンバナを見ました。黄金色に輝く田んぼを赤く縁取っているかのようにヒガンバナが群生している風景に、日本人の色使いのセンスの良さに感じ入り、本当に日本って美しい国なんだとガラにもなくしみじみとした気持ちでしばらく眺めていました。その時に、昔読んだ本の中にヒガンバナは自生しているのではなく、植えられたもので、田んぼの畦にモグラやネズミの侵入を…

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No.87 エキゾチックアニマルに思う

2005年07月発行

エキゾチックアニマルに思う 名矢 結香(WMO)     エキゾチックアニマルという言葉をご存知でしょうか。厳密な定義はないようですが、実際にはイヌ・ネコ以外の伴侶動物を指します。ここには哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして魚類や昆虫を含むこともあります。   最近はペットショップに行くと、驚くほどたくさんの種類の外国産の動物?エキゾチックアニマルを見ることができます。またインターネットで手軽に購入することもでき、輸入を代行してくれる業者などもあるようです。 財務省貿易月表によると、2004年には哺乳類は…

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No.85 サルの「川干し」

2005年01月発行

サルの「川干し」 泉山 茂之(WMO)        信州の伊那谷では、サルの「川干し」の話しを、幾度となく聞きました。サルの「川干し」とは、サルたちが渓流の石を積んで、水の流れを変えて川を干す、 という仕事のことを云います。サルたちは、干した河原に残された魚などを獲ることができます。サルたちが、ほんとうに川魚を食べるかどうかは別にしても、 そんな光景を一度は見てみたいものだと、私は想っていました。 サルたちの生き方は、「自分のことは、自分が責任を持つ」、ということが基本です。自身が得た食料は、母ザルさえ…

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No.84 彩りの秋、サルの顔色をうかがう

2004年10月発行

けものけのなか 彩りの秋、サルの顔色をうかがう   岸本 真弓(WMO) 台風18号の暴風と塩害で今年は紅葉を楽しめない地域が多いそうだ.WMO関西分室の周りも例外ではない.ただ関西分室は神戸市にあるとはいえ,裏六甲に位置し,南風は標高約1000mある六甲山塊に遮られて被害はかなり免れた.表六甲や淡路島の山々では,斜面の向きを,風の当たり具合を版にとられたかのように赤褐色に染められている.さしずめスギ・ヒノキたち針葉樹は凹面か. ひと秋紅葉を楽しめないことくらいは我慢できるが,秋の実りに頼る動物たちのことが心配だ.…

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