フォトブログ一覧
No.255 森の賢者
清野 紘典 微動だにせず、じっと見つめられると、存在感に圧倒され、その世界に吸い込まれてしまいそうです。 フクロウ。 獲物を捕まえるための丸く平たい顔の集音装置と精密で奇妙な首の動き、長い時間同じ姿勢を保つ骨格筋、鋭いアーム。 進化のなかで身につけた特殊な機能をもつ賢者が、今日もひっそりと森で暮らしています。 (注。写真は飼育個体です) 20160801_kennja02.png
No.254 真田丸
岸本 真弓 シカやイノシシを捕獲するために設置したククリワナに誤ってクマが捕獲されてしまうことがある。本来の目的でない動物が捕獲された場合には、速やかにワナから解除し、放獣しなくてはならない。 しかし、クマは危険な動物である。そのため麻酔薬を投与した上でのワナからの解放および安全な地での放獣が必要となる。 一方、ククリワナにかかったクマは必死である。多くの個体が夜に移動していてうっかり捕まってしまうのだろう。空が白んでくるにつれ焦りとパニックは最高潮となる。なんとかして逃れようと必死に土を掻き続ける個体がいる。 写…
No.253 三角点探訪~番外編~御枡局三角點
岸本 真弓 愛知県に調査に行った時のこと。 山頂でも尾根筋でもないところ、古い人道の脇に三角点らしきものを見つけた。刻印の字は明瞭であり、左列は三角點(てん:点の異体字)と読み取れたが、右列の「御枡局」の読み方がわからない。 写真に納めて、後日調べた。 「御枡局」は「御料局」のことであり、皇室の所有地(御料地)を管理するため1885年(明治18年)に宮内省に設置された部署であることがわかった。御料地の測量のために御料局が設置したのが御料局三角点であり、1908年(明治41年)に御料局が帝室林野管理局と改称された後に…
No.252 赤も青も注意
岸本 真弓 これまでに3度出会った。同じところで。 日本海側中国地方のある県で、青いヤマカガシに出会う。初めて見つけた時はびっくりした。模様はヤマカガシだが、色があきらかに認識と異なった。持ち帰って一緒だった両生爬虫類に詳しい調査仲間に見せたところ、変異色だと教えられ、蛇の専門家にお譲りしようということになった。 初めての個体と2012年の2度目の個体(写真1)はDOR、車にひかれたぺちゃんこの個体だった。3度目は2014年10月、生きている個体(写真2)。動画の撮影にも成功した。 ヤマカガシは色の変異が大きいらし…
No.251 みんな友達
岸本 真弓 調査地に向かって車を走らせていると、刈り取られた田んぼが賑わっていた。近づくとさまざまなオブジェが飾ってある。近年全国各地で見ることのできる『案山子祭り』だった。地域のお祭りを模したものや、何気ない日常を切り取ったもの(写真1)。多くの力作が展示されていた。その中にあった「みんな友達」。 この地ではクマは絶滅している。少し離れたところにほんのわずかな個体が生息しているにすぎない。その現実がこの案山子を作らせたのか。悲しくもあり、嬉しくもある。 20160720_tomodachi04.jpg
No.250 全部苦かった
海老原 寛 シカが林業に与える影響のひとつに、樹皮剥ぎがある。材として育てているスギやヒノキの樹皮を剥いで、価値を落としてしまう被害である。これは各地で多く見られてはいるが、シカの密度は同じでも、樹皮剥ぎがされている地域とされていない地域があるように思う。これにはシカの密度だけではなく、利用可能な資源量も関わっていると考えられるが、一種の文化のようなものもあるのかなと考えている。また、樹皮剥ぎがよくされている地域でも、されている木とされていない木が混在しているように思う。樹皮の剥ぎやすさなのか、おいしい木があるのか…
No.249 ピットフォールトラップ
岸本 真弓 ずっと若かった頃、ピットフォールトラップでタヌキの食物となる地上徘徊性甲虫層の調査をしたことがある。 ある年の冬、シカの調査で近畿地方の山を歩いていると、足下に糞虫の死体らしき個体が多数ころがっていた(写真1)。どうしたのだろうとしばらく写真など撮っていたが、ふと前方に目をやると、目の前にあるものと同じものがある。そう、倒れたプラスチック杭だ。そちらの杭の周りにも多数の糞虫の死体(?)がある(写真2)。ふと地面に残る杭の中をのぞく。中にあるものを溜まった水の中から掻き出す。測ってみたら深さが44cm…
No.248 小さな力が集まれば
海老原 寛 テントウムシは小物のデザインなどにもよく用いられ、かわいい印象があるのではないだろうか。しかし、私はテントウムシに襲われたことがある。ある年の10月、サルのテレメトリ調査のためにアンテナを振ろうと車から外に出たところ、多数のテントウムシが飛び交い、絶え間なく顔に、体にぶつかってきた。急いでアンテナを振り、車内に逃げた。ふと目の前にあった電柱を見てみると、下から上まで信じられない数のナミテントウが集合していた。その数は1万程度ではないかと思われる。冬眠の準備をしようと集まっていたのだろうか。原因はわからな…
No.247 毒肉強食
岸本 真弓 四国のある県でのこと。調査を終えて集合しようとしていると、仲間がなにやら夢中になっている(写真1)。 近づき、説明を受けながら目をこらし、焦点を合わせるとなんと! 蛇が蛇を食べていた(写真2)。よく見れば食べられている個体はマムシの幼蛇である。一方、上半身(? 地面から直立する前1/20身)をえづかせながら丸飲みしていくのはシマヘビ。 大きさが雲泥の差とは言え、マムシは本州最強の毒蛇。どうして勝てないのか。鼠でも追いつめられたら猫を咬むというのに。上あごとか下顎とか、口に挟まれた絶対絶命状態で舌に噛みつ…
No.246 負けるもんか
海老原 寛 全国でシカが増加し、植生の衰退が生じている。その現象の1つとして植物の矮性化があり、シカの影響評価の指標として用いられている。ある地域で見つけたイヌツゲは矮小化の程度が激しく、本当に小さな葉をつけていた。それだけシカの影響が大きいということが読み取れる。しかしそれは、シカを主役に物事を見てしまうからこその視点に他ならない。このイヌツゲは、どんなに繰り返し食べられてもどんなに矮小化されようとも、懸命に生きている。植物を主役にしてみると、生きる執念のようなものが感じられ、尊敬と共に応援をしたくなるのである。…
No.245 やりこみ要素
宇野 浩史 アンテナや受信機、コンパスを駆使してサル群の位置を特定するロケーションは、まるで宝探しゲームのようだ。アンテナを振って発信音が最も強く聞こえる方向に群れがいるという原理は、割と単純に感じるかもしれない。しかし、地形によって電波の入り方が異なったり、電気柵のような発信器に似た紛らわしい電波があったり、はたまたサルを気にしつつ狭い道を駆け抜ける運転技術が必要だったりと、決して簡単なものではない。 このような中、電波の元である発信器の装着された個体を発見することは、このゲームにおけるちょっとしたやりこみ要素だ…
No.244 野生動物とのつきあい方
岸本 真弓 川沿いの道を車で走っていると、川の中と岸にシカがいた。川岸でのんびり草を食んでいたシカも私たちの車が近づくと面倒臭そうに川底に降り、母子3頭とぼとぼと歩きだした。 いったん車の進行方向を確認し、そろりと車を前に出すと・・・ 母子が振り返った、排尿しながら。。。 なんと緊張感のない姿。いったいどういうつきあいが続くと人間とシカはこのような関係になるのだろうか。 これから30年ほどの間に日本人と日本の野生動物との関係は激変するだろう。今は野生動物を殺し、奥山に閉じ込めようと人間は躍起になっている。しかし…
No.243 ミイラ!?
檀上 理沙 昨年春の糞塊密度調査で出会った不思議なもの。ミイラ化したような動物の死体(写真1)。 ミイラとは人為的加工ないし自然条件によって乾燥され、長期間原型を留めている死体のこと(ウィキペディアから引用)を指すらしいが、この写真の動物は顔全体と四肢の先だけミイラ化しているように見えた。ミイラ化といっても、皮膚が乾燥して黒色化したものが骨の表面に張り付いているといった感じで、腐敗の一過程にすぎないのかもしれないが私は見たことがなかったので驚いた。もし、これがミイラだとしたら、私の頭の中は古代エジプトへ飛んでいって…
No.242 近くて遠い
海老原 寛 ある動物園のバードゲージには、カワウやアオサギなど、日本の鳥が多数放たれていた。ちょうど時期だったようで、多くの鳥が営巣している。ふと見ると、ケージの鉄骨の角でカワウとアオサギが突っつき合いのケンカをしていた。だが、お互いの嘴は相手に届くことはない。なぜなら、2羽の間には金網があるからである。そう、アオサギはケージの外にいるのである。ケージの中にサギが多数飼育されているため、野生のサギ達が安全な場所だと勘違いをし、コロニーを形成してしまったようなのだ。雛が孵り、巣立つまで延々と続くであろうこの不毛な戦い…
No.241 クスさん
宇野 浩史 イノシシ痕跡調査の道中、美しい網目状の繭を見つけた。 調べると、クスサンという蛾のものであるそうだ。クスサンは、漢字で樟蚕と書き、その名の通りクスノキなどを好んで食す、ヤママユガ科の一種だ。幼虫はシラガタロウと呼ばれ、クスノキだけでなくクリやクルミ、トチなどに食害を与える害虫として扱われる一方、誰が思いついたのか、その繭糸腺はテグスとして利用されることもあったそうだ。 「クスサン」、「シラガタロウ」という、害虫にしては何となく愛嬌を感じてしまう名称も、現在の主流であるナイロン製の釣糸がまだ手に入りにくか…
No.240 針の穴を通す
岸本 真弓 錯誤捕獲されたクマに麻酔をかけ、檻から出して山に返す。移送放獣という。ハコワナの場合普通は吹き矢を使うが、捕獲檻が脆弱で壊されそうというお話なので、少し遠方から麻酔銃で麻酔をかけることになった。1射目、ちょっと失速し手前の何かに当たりクマに到達せず。その後無事命中し、クマはやがて一時的な眠りについた。 動かなくなったことを確認して、近づくと最初の矢がものの見事にハコワナの針金に刺さっているのがわかった。こんなところに当たる確率は、10cm×7cm格子の3mm径ワイヤーメッシュなら、102/7000(約…
No.239 いにしえ石を発見
姜 兆文 丹沢山地でのシカ調査を終了後、川沿いを歩いて山を降りる途中、写真1に示した石を発見した。この石を見た瞬間、農耕時代の石器ではないかと思った。鋭い三角形の先端部および鋭く磨くために残ったはっきりした稜状線、石全体の滑らかな流線形(写真1)と直角の後部(写真2)。どちらの特徴も、昔、農作業で牛や馬に曳かせた、田起こし用の犂の鍬(写真3)の部分だと思われる。皆さんはこれが人間の手で加工されたものだと思うでしょうか。いつか、考古学者に依頼し、鑑定してもらいたい。 写真1.鋭い先端部と直角な後部 写真2.磨くため残…
No.238 心霊写真の正体
檀上 理沙 サルの性年齢識別研修のため、ある野猿公苑を訪れた時のこと。 突然、サルの横から生首がこちらを見ていた(写真1)。 正体→サル用の餌を求めて現れたシカ(写真2)。 20160502_shinrei3.jpg
No.237 甘い椿
岸本 真弓 椿の花は甘い。花が大きいので蜜もたっぷりだ(写真1)。 冬の間地味な色合いの林を彩ってくれる椿の花も春になると、ポトリと落ちる。 その落ち方が首を切り落とされるようだとのことで、武士には忌まれたと中学の時の英語の教科書に載っていたのを思い出す。 そんな花の落ち方の恩恵にあずかっている動物を映像が捉えた(写真2、写真3)。 シカだ。動画で見るとそこいらに落ちている椿の花をパクパク食べている。 シカの食べるもので甘いものはあまりないように思う。年に一度のデザートの季節なのかもしれない。 20160428…
No.236 天罰でしょうか?
姜 兆文 山のアカマツ林内を夢中で糞塊調査していたときのこと。下を向き、歩きながらシカの糞塊を確認していると、誰かが私の頭を一撃した。 「痛い、イタイ!誰だ!?」 落ち着いて周囲を見回すと、まっすぐ横に伸びた腕と、その先には固く握られた“拳”があった。私の頭を殴ったのは木の“拳”だったのだ(写真1)。 木と木の間隔が広く、歩きやすい林内を心地よく調査していたため、突然のパンチは余計にインパクトがあり、不思議にも思った(写真2)。私は何か悪いことをして、天罰を受けたのだろうか。かえりみても、天罰を受けるようなことをし…