研究員によるフォトブログ

No.282 奇跡と儚さ

2017年10月09日

海老原 寛 シカの調査で山の中を歩いていたところ、尾根上に突然ササが現れた。ササが占める面積は直径2m程度であり、ササ藪と呼べる広さではない。近くにササ藪があってそこから伸びてきたわけでもない。集落近くでもない。本当に突然、尾根上にササが現れたのである。ササは一般的に、地下茎を伸ばして専有面積を拡げていく。それでも何十年かに一度は花を咲かせ、種子を作るようである。そんな何十年かに一度作られた種子がこの尾根上に落ち、しっかりと成長しているのだろうか。また、不思議なことにこのササはとても窮屈そうに限られた範囲に密生して…

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No.281 価値観

2017年09月29日

海老原寛 シカが増加するとほとんどの植物が食べられ、森の地面が露出してしまう。ただし、シカは嫌いな植物は食べないので、その植物だけは地面に残る。この森も例に漏れずシカが多く、地面が露出してしまっているが、食べられずに残っている植物がいる。マンリョウである。 マンリョウは漢字で万両と書かれることもあり、お金を連想させる縁起のいい植物とされている。マンリョウがなぜ嫌われているのか理由はよくわからない。少なくとも、人にとっては縁起のいい植物なのに、シカにとっては価値がないようである。    

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No.280 死骸がいっぱいの緑の遊歩道

2017年09月20日

姜兆文  夏のある日、駅へ行く途中のことであった。八王子バイパス脇の緑の多い歩道を歩いていた時、大量のミミズの死骸(写真1)に出くわして、驚いた。  バイパスと歩道の間にはツツジの茂みがあり、歩道を挟んで向かい側は緑豊かな住宅地である(写真2)。ミミズは茂みから住宅地へ移動する途中、炎天下で死んでしまったのだろう。人間は快適に生活するために道路を作ったが、ミミズとしては、大変な迷惑だと思う。約3メートルの歩道は人間にとってはさして広くはないが、ミミズにとっては、大変な距離になる。また、このようなミミズの死骸を見かけ…

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No.279 気合いを入れすぎて

2017年09月11日

藏元武蔵 サルが道を渡り始めた(写真1)。 他のサルもぞくぞく渡りはじめたので、 「負けてたまるか!」と気合いのストレッチ。 その間に、全員に抜かれた・・・(写真2)。     写真1                        写真2          

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No.278 社有林というもの

2017年08月18日

岸本真弓 山を歩いていると、ごくたまに「社有林」の看板を見つける(写真1、写真2)。今回紹介したのはいずれも製紙会社の社有林の看板である。 写真1の会社をインターネットで調べてみると、「社有林の保全を通じて地球環境と地域社会への貢献を図っています」というキャッチフレーズが飛び込んでくる。この会社は紀伊半島を中心に社有林を擁している。もともとは他の製紙会社と同じく、第二次世界大戦の戦中戦後に原料素材の確保のため社有林を確保してきたようだが、その後の時代の変化に応じて、現在ではスギ・ヒノキの人工林経営と広葉樹天然林の再…

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No.277 しし神さまの檜皮敷(ひわだじき)

2017年08月07日

岸本真弓 京都の山。シカの密度が高く、下層植生はほとんどない。最初に草本類やササが消え、やがて低木、そして中低木が消失していく。 シカの糞塊数を数えていく調査では薮がなくなり、下層植生も少なくなれば、歩きやすく見落としが少なくなって精度の高い調査ができる。 が、やっかいなことが起こることもある。シカの嫌いな植物(フォトブログNo.89)の繁茂だ。特にアセビはやっかいだ。常緑の低木が膝丈くらいでみっちり生えていると、足下が見えにくい。背丈くらいで密生していると歩きにくい。 やっかいだと思っているだけではどうにもならな…

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No.276 対称的死骸 (アマガエル)

2017年08月02日

海田明裕 コンクリートの平滑な地面 ふと目線が何かに引き付けられる 不自然に整った形 すぐにカエルと判明するも あまりにシンメトリカルな死に様 おそらくアマガエルであるが そんなことよりなぜこんな形で干からびたのか 悲運の平面ガエル  

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No.275 日常に飽きたタヌキ

2017年07月20日

藏元 武藏 調査で山を歩いていると、タヌキのタメ糞に遭遇。 いつもは尾根上の平らな場所でよく見かけるが、今回は違った。 糞の後ろ側(矢印のとこ)は、直角の急斜面で、2mぐらいの落差があった。なぜこんなところに?糞の後ろ側をのぞくと、一個だけ糞が下に落ちていた。なんてやつだ・・こんなスレスレの場所で、1個しか落としてない・・次はどうする。糞の上?それとも横に溜めるのか・・ 人は時に、落ちるか落ちないかのギリギリを楽しむことがある。 それは動物も同じかもしれない。

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No.274 ツバメの住宅情報に朗報

2017年07月06日

姜 兆文 本ブログNo.141で、南アルプスの芦安集落のバスターミナルでツバメの家族(写真1)と出会ったこと、その後巣が撤去され、数年間同じ場所での巣の確認ができなくなり、本ブログNo.215で、ツバメの「住宅難」を記事にした。 生活スタイルの変化により、軒下のある伝統的な日本家屋が減り、軒下でのツバメの巣作りの適地は少なくなっている。また、折角、巣を作ったのにツバメの糞害を危惧して撤去されたケースも多かった。 このようなツバメの巣作りにとって厳しい環境の中、東北自動車道の佐野PAでツバメの巣作りを手助けしようと工…

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No.273 優しくなれる春の山

2017年07月03日

岸本真弓 萌える春の山。メリハリのある紅葉や、新緑の頃のみずみずしさと生命力あふれる力強さとは異なり、優しさと曖昧さとそしてどこかわくわくさせる山のいろ。日一日いろはうつり、山のしたからうえへ、川のしもからかみへ、うごいていく。 山を歩けばこの時を待ちわびた小鳥たちの力強いさえずりがあふれる。水たまりには陸にあがる時を待つ無数のオタマジャクシ。ウラジロも羽ばたこうとする白鳥が頭をもたげたように新しい芽をだしている。すべての動植物たちが、春を謳歌する。私も、苦手なもの(フォトブログNo.202)へも、やっかいなもの(…

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No.272 シカに化けたラクダ

2017年06月20日

海老原 寛 調査中、シカの置物を見つけた。しかし、よく見てみると違和感がある。これはシカではない・・・ラクダだ。ラクダの置物にシカの角を付け、色を塗り替えただけだ。ラクダとシカでは共通点は反芻獣であることくらいだろうか。 日本各地でシカによる生態系被害が生じている。シカが増えすぎたせいで植物が食べ尽くされ、土壌が露出して更地になってしまっている場所もある。もしかしたらこの置物は、シカが日本の山をラクダが住んでいる砂漠のようにしてしまうかも・・・という暗示なのかもしれない。

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No.271 軋轢の先

2017年05月31日

宇野浩史 電波を追ってサル群れを探している最中、ある集落内の路地を曲がると同時に、数頭のサルが目に入った。 「居たっ!」という喜びが沸き立ったが、周囲の光景を見て、一瞬にして残念な気持ちになった。 サルたちの手には大粒のミカン。そして足元には大量の残骸が散らばっていた(写真)。 遠くでは爆竹の音が鳴っているが、サルたちは微動だにしない。私の車が数メートルのところまで近づいても、大きく逃げることはなかった。 このようになってしまった群れを所謂『良い』群れに戻すことは簡単ではない。 集落に住む人々とサルたちの将来像を想…

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No.270 開いたオ〇オ?

2017年04月28日

岸本真弓 春、山を歩いていたらシカの角が落ちていた。拾い上げるとなにやら見たことがあるもののような。 シカの角は毎年春になるとポロリと落ちる。そしてまた新たな角が生えてくる。角が落ちた直後は頭の角座(角がついている台座のようなところ)には血がにじむが、それもすぐ乾き、皮膚が覆って次の角の成長が始まる。何のために毎年生え換わるのか。 オスの角は強さのシンボル。メスをめぐって闘うとき、昨年よりは強くなるチャンスを与えられているのかもしれない。子育てをするメス、子をつくるために角育てをするオス、春から夏のシカの食欲は旺盛…

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No.269 木にも牙が生える?!

2017年02月20日

姜 兆文   「牙」とは動物が口に持つ、骨組織でできた、大型で細長く鋭い歯を指す。 山での調査中、倒木の幹の一端生えた「牙」を発見し(写真1)、驚いた。     腐食が進んだ幹の真ん中は空洞になっており、中を覗くと「牙」は奥まで放射状に交錯して並んでいた(写真2)。 よく見ると、「牙」は、木材によくみられる節の部分が残ったものだった。幹が生長するのに伴い、横に伸びた枝が、幹の中に埋まるような形で残ったのだ。幹部分は腐ったのに、なぜ「牙」だけが残ったのだろう。節のたくましさを目の当たりに…

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No.268 オオカマキリの生命力

2017年02月14日

姜 兆文 ベランダのエアコンの室外機にかけていた日よけ用のすだれを撤去しようとしたところ、すだれのよしの隙間に体長約10センチのオオカマキリを発見した(写真1)。寒くなったので、日当たりの良い、暖かいところを求めてきたであろうカマキリの邪魔をしないように、その時はすだれの撤去をとりやめた。 一週間後に再び確認すると、カマキリはまだ同じ場所にいた。前脚の鎌の先端部で必死にしがみついていたが、1週間前に比べると前脚の関節がだらりと伸び、殆ど力が入らなくなっているように見えた(写真2)。 最期を見守ろうと思ってすだれはそ…

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No.267 これは何でしょう?-答え- (後編)

2017年01月17日

  杉浦 義文       前回のブログでサルのお尻についていた白いもの、正解はオスの精液です。   ニホンザルの精液は射精されると次第に白く固まります。   交尾によってメスの膣内に放出された精液は栓のようになり、精液の流出を防ぐ機能があると言われています。   (膣栓とも呼ばれています-写真1と2参照)   メスザルとオスザルには申し訳ないのですが、取り出してみるとチーズのように弾力がありました。   匂いは、何とも言えませんがいい…

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No.266 これは何でしょう?(前編)

2017年01月04日

  白井 啓       オトナメスのお尻あたりに白い物が付着しています。   これは何でしょう? (ヒント、いま恋の季節!)  

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No.265 「紅富士」が見えた日

2016年12月17日

姜 兆文   ある日、調査を終えた後、山中湖畔のある宿に宿泊した。翌朝、富士山を鑑賞するのを楽しみにしていた。朝、目が覚めたら、布団の中から、カーテンを通して、ウェディングドレスでドレスアップされたような綺麗な富士山(写真1)が見えた。寝ながら富士山が見えるとは予想外で、嬉しかった。窓を開けてカメラを構え、写真を撮ろうとしたら、富士山は徐々に赤くなっていた。もしかしたら、これは「紅富士」(あかふじ)になりそうだ(写真2)。   夢、特に初夢に富士山を見ると、縁起が良いとされる。紅富士が見られるの…

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No.264 大げさじゃない丸々

2016年11月30日

岸本 真弓   11月中旬にイノシシの捕獲檻に錯誤捕獲されしまったクマ。 冬眠を控えて丸々と太っていた。 体重は114kg。りっぱなお腹だ(写真左上)。 麻酔をかけて奥山に帰す(奥山放獣という)ため、放獣先に行くと、クマ注意の看板が。 このクマがモデルのような丸々としたクマの絵だった(写真右下)。 冬眠に入る12月までにはまだ少し時間がある。 ここから加速度的に脂肪を蓄えることを考えれば、写真のクマはこの絵の丸々さを越えるかもしれない。    

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No.263 秋の一句

2016年11月14日

  難波 有希子       奥山に   もみぢ踏み分け   鳴く鹿の   声聞くときぞ   秋は哀しき       「遠く人里離れた奥山で、一面散り積もった紅葉の枯れ葉を踏み分けながら、恋の相手を求めて鳴く雄鹿の声を聞くときこそ、秋の悲しさはひとしお身にしみて感じられるものだ。」   (訳出典:小倉百人一首殿堂 時雨殿https://www.shigureden.or.jp/about/database_03.ht…

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